鋼鉄乙女、舐めんなよ。~週末編~
「たぶん、週末はそれぞれの時間を楽しんでるんだろうな……」
昼下がり、部室の片隅で体育座りする滝川凌は、
自称“においマイスター”として妄想の世界に旅立っていた。
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《凌の妄想》
早矢:
「ん……今日はちょっと遅く起きちゃった」
ピンクのルームウェアでベッドから伸びをする早矢。
朝食はアサイーボウル、午後は日向で読書。
愛犬と散歩し、夕暮れにはバスソルト入りのお風呂でリラックス。
「あ〜ん、休日って最高〜」と柔らかな笑み。
真帆:
白いエプロンにパステルのワンピース。
紅茶を淹れながら、日記帳にペンを走らせる。
「恋って、香りに似てるのかも……ふふっ」
午後はおしゃれなカフェで創作活動にふける文芸少女。
澪:
庭で草花に水をやるおっとり系。
「ほら、アネモネが咲いたよ」
陽だまりの縁側で猫を膝に乗せて微笑む、和風美少女。
夜は縁側で月を見ながら和三盆をちびちび。
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……だったらよかったのに。
《現実》
早矢:
朝5時に起床。プロテインを飲み干し、
10キロラン→筋トレ→自宅風呂でアイシング→自転車で市営プールへ。
帰宅後は冷水シャワーで「整い」、夜は階段ダッシュ20本で〆。
「このキツさが、生きてるって証明だから」
笑顔の中に鬼が宿る、ストイックの鬼。
真帆:
午前は音楽室で1人トランペットを吹き続け、
午後は仁丹を使った料理×実験タイム。
「うん……この“マーマレード仁丹チキン”、イケるかも?」
香りと味覚の化学反応に心を躍らせる、仁丹系女子。
澪:
父の手伝いで、工事現場に参戦。
「今日は鉄骨30本運んだからまぁまぁかな」
足場に立ち、鉄を背負い、軽トラで資材を積み下ろす。
作業服の袖をまくりながら、
「でも帰ったら、お風呂でラベンダー炊こ」とぽつり。
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妄想の100倍ハードな現実。
それでも、どこかキラキラして見えるのはなぜだろう?
凌は思う。
「鋼鉄乙女、舐めてました……てか、オレより全然、人間強度高ぇ……」
彼の中で、またひとつ「変態的リスペクト」が芽生える週末だった。




