体育祭 後編:鉄管キャリー・デスマッチ
鉄管抜き競技が終わり、生徒たちはほっとした様子で後片付けを始めていた。
だが、誰よりも汗を流し、腕を光らせていた2人――佐々木早矢と澪の間には、まだ終わらぬ火花が残っていた。
早矢「……片付けまでが体育祭、ってやつだろ?」
澪「当然。だが、そこに“勝敗”がつかないとは限らない。」
無言で鉄管を抱え出す2人。
「ちょ、早矢先輩、4本!?えっ、澪先輩6本いった!?嘘でしょ!!」
「え、それ両肩に交差で乗せてる!?新技!?!?」
しかも2人は競って中に泥が詰まった重い鉄管を選んで担いでいる。恐るべし、鋼鉄乙女のプライド。
もはや場外戦どころか、鉄管界のウエイトリフティングである。
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トラック1周を担いだまま歩く、という謎ルールが即興で設定され、
いつしか周囲にはギャラリーができていた。
真帆「……これはもう“最強鋼鉄乙女決定戦”じゃなくて、“人類超越展覧会”ね。」
凌(横で旗を持って見てる)
「なんか俺、オリンピック見てる気分……」
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ラスト1周。2人の鉄管は12本に達していた。
肩に食い込む鉄の束。足元のぬかるみ。息が荒れる――
が、誰一人として、目を逸らせなかった。
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最終的に、ゴール前で鉄管を落としかけた早矢の腕を、澪が無言で支える。
2人は、肩を並べて12本の鉄管を運びきった。
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「……ドロー、だな。」
「また、やろう。」
その日――体育祭のスローガン「絆と勝利を、仲間と共に」の横に、誰かが落書きでこう書き足した。
「そして、筋肉で語る者たちへ」
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【後日譚:鉄管は重かった】
放課後のグラウンド。
イベント後の静けさの中、ひときわ目立つ少女の姿があった。
トランペットを背負い、なぜか両手に鉄管を持つ三ツ石真帆。
「ふふっ……私だって、やってやるわよ……!」
憧れの鋼鉄乙女たち――早矢と澪に触発され、真帆は今、鉄管という青春の塊に挑もうとしていた。
「吹奏楽部の後輩にも言われたのよ。“真帆先輩も、力強かったです”って。
……その期待、裏切れないっ!!」
鉄管をぎゅっと胸に抱え、よいしょと持ち上げる。
わりと本気で、2本+1本の計3本。
そして、グラウンドに向かって――
「いざ、鋼鉄への道――っ!」
1歩。2歩。3歩目で。
ガコンッッ!!!
真帆、鉄管に足を取られて、盛大にスライディング転倒。
「……ちょっ、ちょっと待って!?痛い!泥!重たい!仁丹出る!!」
そこへ偶然通りがかった凌が、のぞき込む。
「なにしてんの真帆……って、泥だらけじゃん!」
「見ないでえええ!!これは試練なのよ!!」
真帆、顔面赤くしてもがく。
「どこがだよ!!」
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その日、真帆の青春は3メートルで泥に沈んだ。
だが、その姿もまた、ひとつの輝きだった――(かもしれない)。




