体育祭 前編:鋼鉄乙女、空と大地を割る。
朝から降りしきる雨に、生徒たちは肩を落としていた。
本来なら、体育祭で盛り上がるはずだったグラウンドは、ぬかるみと泥で見る影もない。
「これ、絶対中止じゃん……」
誰かがぽつりと漏らしたそのとき――
ドスン!!
地面に突き刺さる一本の鉄管。
「……まだ、やれる。」
頭にタオルを巻き、迷彩柄の作業服に長靴姿の少女――佐々木早矢。
隣には、剣道着の上からビニールカッパを羽織った澪。軍手をきゅっと締める。
「水を逃がすなら、まずここを掘る。」
「鉄パイプを通す。」
「……行くぞ。」
気づけば2人は、まるで工事現場の職人のように、泥の中へ突撃していた。
シャベルを握り、ハンマーを振り上げ、鉄管を地に叩き込む。
泥しぶきが飛び、作業着が汚れるほどに――輝いていく筋肉。
男子たちが呆然と見守る中、女子たちはなぜか歓声を上げていた。
「……かっこよ……」
「ガチで頼れる……」
やがて2人は、体育祭の本部テント(重量級・組み立て式)まで立ててしまう。
しかも、取扱説明書なしで。
空に向かって、澪がハンマーを振り上げる。
早矢が、大地にパイプを打ち込む。
その姿に感動したのか――
ブォオオオオーーー!!!
どこからともなく響き渡る、トランペットの応援ソング。
見れば、真帆がテント下で演奏していた。
汗だくで。口の端には仁丹が光る。
「鋼鉄乙女に……敬礼……ッ!」
そして、2人は気づいてしまった。
「どちらが、“真の鋼鉄乙女”か――」
「……競うしか、ないな。」
ガンッッ!!!
ガンガンガンガンガン!!!
それから数時間後、雨は上がり、太陽が顔を出す。
誰もが目を疑った。
グラウンド一面に、整然と打ち込まれた鉄管の列。
得点掲示板には、赤と白の名前の下に――
赤:37本 白:35本
……それは、打ち込んだ鉄管の数だった。
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「体育祭とは一体……」
そんな声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
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空はようやく晴れた。
が、グラウンドにはなおも無数の鉄管が立ち尽くしていた。
そして教師陣は――頭を抱えていた。
「このままじゃ、リレーも騎馬戦もできないじゃないか…」
「じゃあもう、これを……競技にしちゃえばいいんじゃない?」
その一言で――
急遽発表:本年度体育祭・目玉競技
『鉄管抜き選手権』開催決定!!
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【ルール】
赤組:佐々木早矢軍、白組:澪軍
各軍20人ずつ、相手のエリアの鉄管を交互に引き抜く
一本抜いたら「バシッ!」と旗を立てる
制限時間15分、引き抜いた本数が多い方の勝ち
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【当日の様子】
早矢「全員、スパイク持ってるか!?滑るなよ!!」
澪「油断すんな。グラウンドは、戦場だ。」
指揮する2人の声が飛び交う。
ブォオオオーーー!!
応援席では、真帆が今日何度目かのトランペット。
得点係はなぜか凌。旗立てながら、涙目。
凌「な、なんで俺……っ!!指、もげるうう!!」
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やがて、審判が笛を吹いた。
ピィーーー!!
その瞬間、地鳴りのようにグラウンド中で
ズボッ!ズボボッ!!ズガッ!!
と鉄管が引き抜かれていく。
男子生徒が2人がかりでやっと抜く鉄管を――
早矢は一人で引き抜いた。しかも片手で。
澪はというと、鉄管の根元を正確に見極め、“回して抜く”という高度な技術で効率化。
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【結果発表】
赤:33本
白:33本
――まさかの、同点。
空を見上げる2人。
澪「……まあ、悪くない。」
早矢「いい勝負だったな。次は……鉄骨かな?」
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教師陣「やめてええええええ!!!」




