表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/86

体育祭 前編:鋼鉄乙女、空と大地を割る。

 朝から降りしきる雨に、生徒たちは肩を落としていた。

 本来なら、体育祭で盛り上がるはずだったグラウンドは、ぬかるみと泥で見る影もない。


「これ、絶対中止じゃん……」


 誰かがぽつりと漏らしたそのとき――


 ドスン!!

 地面に突き刺さる一本の鉄管。


「……まだ、やれる。」


 頭にタオルを巻き、迷彩柄の作業服に長靴姿の少女――佐々木早矢。

 隣には、剣道着の上からビニールカッパを羽織った澪。軍手をきゅっと締める。


「水を逃がすなら、まずここを掘る。」


「鉄パイプを通す。」


「……行くぞ。」


 気づけば2人は、まるで工事現場の職人のように、泥の中へ突撃していた。

 シャベルを握り、ハンマーを振り上げ、鉄管を地に叩き込む。


 泥しぶきが飛び、作業着が汚れるほどに――輝いていく筋肉。


 男子たちが呆然と見守る中、女子たちはなぜか歓声を上げていた。


「……かっこよ……」


「ガチで頼れる……」


 やがて2人は、体育祭の本部テント(重量級・組み立て式)まで立ててしまう。

 しかも、取扱説明書なしで。


 空に向かって、澪がハンマーを振り上げる。


 早矢が、大地にパイプを打ち込む。


 その姿に感動したのか――


 ブォオオオオーーー!!!


 どこからともなく響き渡る、トランペットの応援ソング。


 見れば、真帆がテント下で演奏していた。

 汗だくで。口の端には仁丹が光る。


「鋼鉄乙女に……敬礼……ッ!」


 そして、2人は気づいてしまった。


「どちらが、“真の鋼鉄乙女”か――」


「……競うしか、ないな。」


 ガンッッ!!!

 ガンガンガンガンガン!!!


 それから数時間後、雨は上がり、太陽が顔を出す。


 誰もが目を疑った。


 グラウンド一面に、整然と打ち込まれた鉄管の列。


 得点掲示板には、赤と白の名前の下に――


 赤:37本 白:35本


 ……それは、打ち込んだ鉄管の数だった。



 ---


「体育祭とは一体……」

 そんな声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。


 ---



 空はようやく晴れた。

 が、グラウンドにはなおも無数の鉄管が立ち尽くしていた。


 そして教師陣は――頭を抱えていた。


「このままじゃ、リレーも騎馬戦もできないじゃないか…」


「じゃあもう、これを……競技にしちゃえばいいんじゃない?」


 その一言で――


 急遽発表:本年度体育祭・目玉競技


『鉄管抜き選手権』開催決定!!



 ---


【ルール】


 赤組:佐々木早矢軍、白組:澪軍


 各軍20人ずつ、相手のエリアの鉄管を交互に引き抜く


 一本抜いたら「バシッ!」と旗を立てる


 制限時間15分、引き抜いた本数が多い方の勝ち




 ---


【当日の様子】


 早矢「全員、スパイク持ってるか!?滑るなよ!!」

 澪「油断すんな。グラウンドは、戦場だ。」


 指揮する2人の声が飛び交う。


 ブォオオオーーー!!


 応援席では、真帆が今日何度目かのトランペット。


 得点係はなぜか凌。旗立てながら、涙目。


 凌「な、なんで俺……っ!!指、もげるうう!!」



 ---


 やがて、審判が笛を吹いた。


 ピィーーー!!


 その瞬間、地鳴りのようにグラウンド中で


 ズボッ!ズボボッ!!ズガッ!!


 と鉄管が引き抜かれていく。


 男子生徒が2人がかりでやっと抜く鉄管を――


 早矢は一人で引き抜いた。しかも片手で。


 澪はというと、鉄管の根元を正確に見極め、“回して抜く”という高度な技術で効率化。



 ---


【結果発表】


 赤:33本

 白:33本


 ――まさかの、同点。


 空を見上げる2人。


 澪「……まあ、悪くない。」


 早矢「いい勝負だったな。次は……鉄骨かな?」



 ---


 教師陣「やめてええええええ!!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ