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自由研究は自由すぎて、風紀が崩壊した。

夏休み。蝉の声がけたたましい昼下がり。


滝川凌のノートには、タイトルがでかでかと書かれていた。


《自由研究:学校で一番くさい場所はどこだ!?〜においは科学だ〜》


彼は鼻先をこすり、深くうなずく。


「これは、俺にしかできない研究だ……!」


自分の嗅覚という“超感覚”を武器に、校内の匂いをあらゆる角度から解析するという、まさに変態マイスターの本領発揮。


体育倉庫、理科室の標本棚、音楽室のチューバの中——


「ふむ……腐敗臭3、皮脂5、雑菌レベル7……だが、まだ足りない……!」


凌の鼻がピクリと動いた。


「……まだ、どこかに……“最臭”が、ある!」


そして彼が最後にたどり着いたのは、女子剣道部の部室だった。


夏休みでも部活を欠かさない彼女たちの、汗と熱気がこもったその空間——


「これは……“匂いのラスボス”の気配……!」


鍵は開いていた。顧問が見回りの途中で開けたままにしていたらしい。


(今なら……イケる!)


恐る恐る扉を開けると、そこには制服と稽古着、そして数々の剣道防具たちがずらり。


それは、汗と革と青春が熟成した最終兵器の香りの見本市だった。


「ぐっ……こ、この匂い……!!なんという……!」


凌は吸い込んだ。深く、深く。


そして、ひとつずつ丁寧に嗅ぎ始めた。


小手。強烈な掌臭。

胴。湿り気と皮脂の黄金比。

垂。腰元の熱気が生んだ芳醇なアンモニア感。


「これは……開発中の消臭剤じゃ絶対に勝てない……!!」


そう言いながら、自作の試作品スプレーを吹きかけてみる。


——ぷしゅっ。


……結果、“香りがミックスされて地獄”となった。


「ちょっと!なにやってんのよ!!!」


後ろから怒声。振り向くと、剣道部主将・みおが仁王立ちしていた。


「この変態犬ッ!私の垂に消臭剤って、どんな研究よ!?」


「ち、ちがっ、これはっ、研究のっ、こ、貢献でっ……!」


澪は真っ赤になって、畳を突く。


「貢献はしてないし、風紀も乱してる!」


——数日後。


風紀委員・滝川凌は、「嗅覚を使った校内調査による風紀混乱行為」として、正式に風紀委員を解任された。


でも、彼は懲りない。


「俺の自由研究は……まだ、終わってない……!」


彼の夏は、まだ続く。





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