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騎士の連携

 組織側の陣地から、複数の人員が前衛へと進み出てきた……それは明らかに魔物を生成する人間とは違う気配を漂わせている。

 どうやらあれは……考える間にその人間達の姿が変化する。自発的に魔物化した――


『半ば強制的に魔物へと変化したな』


 ジャノが突然俺に話し掛けてくる。


『魔力の総量を踏まえると、ラドル公爵ほどの力はない。どうやら末端の構成員に力を植え付け、使役しているようだ』

「……構成員に無茶をしているみたいだな」

『構成員を使って色々と実験をしているのだろう。その結果、エイテルは自分自身が魔物化せずともその力だけを得ることができた』


 魔物化した人間が騎士へと襲い掛かる。魔力量は単に魔物を生み出すより明らかに多い。

 騎士達は魔物に対し警戒をした……が、退くことはなかった。どうやら迎え撃つ気らしい。


 この勝負、果たして――見守っていると、魔物化した人間と騎士達が激突した。騎士の斬撃に魔物化した人間は腕を盾にして防御する。俺の視界には、騎士の剣をしっかり受け止める光景が見えた。

 多少なりともミーシャの力が付与されている以上、剣を受ければあっさり破壊されてもおかしくない……のだが、魔物化した人間は防ぎきった。


 騎士に付与された力が足りないのか、それとも敵の防御能力が高いのか……理由はわからないが、先ほど交戦していた魔物のようにはいかない――


『だが、後退はしないな』


 ジャノが言う。その言葉通り、騎士達は下がるという選択を取らなかった。

 それはどうやら、明確に勝てると認識している……一度は剣を防がれてしまったが、それでも騎士達は攻勢に出た。魔物化した人間は騎士へ攻撃を仕掛けようと動いたが、それよりも先に騎士の剣が再び当たった。


 組織側の人間は力による押し込みを狙っているみたいだが、騎士達はそれを技術でいなし、反撃に転じた。しかし敵に斬撃が当たっても、刃が通らない……が、騎士達は諦めなかった。

 別の騎士が剣を当て、さらに別の騎士は槍を――そうして幾度となく攻撃を繰り返した時、敵は大きく後退した。それは明らかにダメージを受けてそれから逃れようとするもの。


 効いている――騎士達もそれは直感し、さらに追撃の斬撃を浴びせた。敵はなおも後退し、一度戦場から離脱しようという気配さえ見せた。

 だが騎士達は逃がさない。さらに別の騎士が追いすがり、渾身の斬撃を見舞うと、とうとうその体が崩れ始めた。


 一撃で倒せるわけではないが、騎士達は複数で相手をすることで敵の攻撃を避けつつ、数で押し込むことができる……組織側がこれを打開するには、数を減らしているがなおも残っている生成した魔物と魔物化した人間が連携することだが……両者はバラバラに動いている。

 ここが組織の難点……というか、帝国側が組織を上回っているところだろう。騎士達は連携し、魔物に対処する。負傷者は出れど犠牲者は出ていない点は、連携の差によるものだろうと予想できる。


 そして他の人間へ、騎士達が向かっていく……単独で戦わない限り、恐れることはないという判断か、一気に押し込んでいく。

 後方からやってきた構成員は自分が魔物化すれば蹂躙できると考えていたかもしれないが、そんな結果にはならず二人目が倒される。これによって戦線は瓦解。なおも生成される魔物達すら迎撃しながら、騎士達はさらに組織側へ歩を進めていく。


「……ここまでは完璧だな」

『うむ、順調ではある……しかし、エイテルは騎士達の能力を看破しただろう』

「魔物化した人間……ラドル公爵ほどの能力はなく、そうした彼らを一撃で倒すことはできていない」

『おそらく次こそ、本気で来るだろう……騎士達は進んでいるが、帝国側はどうするつもりだ?』


 俺は組織の陣地へ首を向ける。なおも動かないのだが、相変わらず禍々しい気配は漂わせている。


「ここまでは様子見って雰囲気だな」

『それは間違いない。では次の一手だが……ここまで組織側も戦力は減っている。この状況を打開するには、やはり騎士達が対応できないような凶悪な力を持つ個体だろう』

「ラドル公爵に宿っていたような力……だな」


 そこで、魔物が発するような咆哮が響いた。何事か、と思った矢先戦場全体に凶悪な魔力が広がった。

 来た、と俺は思いつつ体に力が入った。その力は組織側の陣地――その中央付近から発せられたもの。


 そこで、騎士達は攻撃を中断し後退を始めた。その動きから予め決められていたのだと察せられる。帝国側もラドル公爵に付与されていた力の持ち主と真正面から戦うつもりはない……ここからが、本格的な戦争が始まる――


「ジャノ、どうする?」

『まだだ』


 俺の問い掛けにジャノは言う。


『もう少し待とう……皇女達も凶悪な力を持つ存在は予想していたはず。騎士達がそれをどう対処するか……それを確認する必要がある――』


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