表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/121

最初の激突

 戦場は前哨戦と呼べるような展開を見せており、帝国と組織――双方が相手の戦力を窺っているような状況が続く。

 だが一方的に戦力を削っているのは帝国側だ。組織の人間が生み出す魔物を騎士達は確実に迎撃している。怪我人は出ているみたいだが、そういった人員はすぐさま後退して南側に存在する帝国側の本陣近くに戻り治療。後方からは別の騎士が入れ替わり前衛の人数を減らすことなく対処している。


 俺はじっと帝国側の騎士達を観察……彼らの動きには淀みがない。ミーシャに付与された力をきちんと使いこなしている様子。

 ただ、このまま戦いが続けばどうなるか……。


『まずはリソースの削りあいだな』


 と、現状をジャノが考察した。


『組織側としてはまず、組織の構成員を使って魔物を生みだし戦力を削っていく。現状、組織側では主力となる存在は出ていない上、末端の構成員は捨て駒として起用しているだろう。そういった人員を利用し、騎士達の戦力事情を推測しつつ、相手の戦力を削る』

「現時点で騎士はやられていないが……」

『負傷者は出ているし、何よりミーシャ王女が付与した力は削っている。組織側も自分達が持つ力を帝国が保有していることは察している。実際、騎士達はその力を活用し魔物を倒しているが、それは当然魔物を倒すために消費することになる』

「このまま長期戦となったら、騎士達に与えられた力が消える……魔物に対抗できなくなる、と」

『組織の理想としては間違いなくそれだろう。もっとも、その間に騎士達は仕掛けるに違いないが』

「まあそうだよな……帝国側はそのタイミングを窺っているわけか」

『おそらくは。現在は魔物と戦い自分達の能力が通用するのか……そして、相手がどういう手を打ってくるかを見ている状態か』


「先に動くとしたら帝国側だろうな……ただジャノ、構成員が魔物を生み出しているのはわかるんだが、組織側のリソースはほとんど減っていない、ということでいいのか?」

「前線にいる構成員達の魔力は消費している。例えば騎士達が一斉に襲い掛かってきても、魔力が減った状態ならば即座に対応は難しいだろう……戦力が減るという観点から考えれば多少なりとも削っているとは思うが、組織からすれば微々たるもの、といったところだろうな」


 ジャノがそう解説を行った時、戦場が動く。騎士達が一斉に最前線にいる魔物を倒した瞬間、一気に前進を開始した。

 明らかに動きが変わった、と組織側も思ったことだろう。魔物を生み出す構成員はやや後退しつつそれでもなお戦力を生み出す。


 当たり前だが、魔物の生成を止めれば騎士達はすぐさま襲い掛かってくる。つまり、均衡を維持しなければその先に待っているのは――


『魔物を生み出す存在は複数いる』


 ここでジャノが発言。


『そのどれかを倒すだけでも前線の状況は帝国側に大きく傾く』

「その勢いで突撃するかな?」

『どうだろうな。騎士の動きからすると、組織の力について、騎士達はある程度知識を保有している様子。無理に突き進めばラドル公爵クラスの力を持っている構成員が現れてもおかしくない……そうなれば騎士達が持つ力では蹂躙されるだけだ。そういった状況は帝国も避けなければならない以上、深追いはしないだろう』


 ジャノが語る間に、騎士達が魔物を倒す速度が増し生成者へと迫ろうとする……ここで、今度はやや後方から魔物が生まれ、騎士達へ突撃を仕掛けた。

 どうやら後方にも同様の能力を持つ構成員がいる……組織としてはこの段階で前線が崩壊するのを避けたい様子。まだ帝国側が持つ手の内を明かしていないため……あるいは、長期戦に持ち込むことでリソースを削り続けるのが目的か。


 騎士達はここで立ち止まり、無理することなく迫る魔物の迎撃を開始。再び拮抗状態となるが、騎士達の迎撃速度はさらに増していく。

 均衡を維持していた形から、次第に帝国側に有利が傾いていく……前線が押し込まれる組織側としては何かしら手を打つ必要がある。


 それが仮にラドル公爵のような存在の投入であったなら、即座に介入すべきだろうか?


「ジャノ、どうする?」

『まだ待つべきだ……と、さらに状況が変わっていくぞ』


 ジャノの言う通り、帝国側は前線へ投入する騎士の人数を増やした。戦力に厚みが増した帝国側は、魔物を倒す速度をさらに引き上げ、一気に魔物の生成者へと近づいていく。

 組織側としてはここで踏みとどまりたいようだが……とうとう騎士の一人が魔物生成者へと肉薄した。

 騎士の斬撃が、組織構成員へ届く――次の瞬間、斬撃を受け当該の人物は倒れた。次いでその体躯が塵へと変じていく。


 それをきっかけに魔物の数が減り、騎士はさらに押し込んでいく。最初の激突は明らかに帝国側の勝利。けれど騎士達は油断などせず、まずは最前線の戦力を削っていく。

 となれば、組織側は次の一手を出さなければならない……そう考えた瞬間、組織側が新たな動きを見せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ