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器の素材

「器についてですが、これにも二つの問題が存在しています。まず一つ目は、魔力の質的な問題です」

「世界を滅ぼす力……それは普通の魔力とは異なるものであるため、器にも特別な物が必要、ってことか?」


 質、と聞いて問い掛けるとイーデは「そうです」と応じた。


「世界を滅ぼす力は魔力ではありますが、古の種族が作成したものであるため、人間の魔力とは大きく異なります。まったく同じ量魔力があったとしても、同じ器でも抱え込める量が違います」

「……質的な問題があることに加え、量的な問題もあるよな?」


 俺がさらに言及するとイーデは首肯した。


「はい、それが二つ目の問題……質的に極めて特徴的なことに加え、決戦に備えて必要な魔力量を貯め込むのに必要な器……ミーシャ王女が肉体に宿っていればどれほど抱えていても気付かれない、という風に語っていました。理想としては身の内に貯め込む器を用意するのがベストかもしれませんが、それを成すには時間が足りません」

「別に器を用意する方が早いと」


 俺の指摘にイーデは「はい」と返事をしつつ、


「しかし、世界を滅ぼす力……それをエルクさん達が納得いくまで貯め込むことができる器となったら、器を作成するのも大変でしょう」

「実現可能性はあるのか?」


 話を聞く限り、素材がなければ……と思っていると、


「可能性そのものは、あります。ラムガザ鉱石を用いれば、おそらくは」


 ラムガザ――鉱石に含有する素材であり、人類が発見できている鉱石の中で、もっとも魔力を貯め込むことができる素材でもある。

 無論、希少価値は高くそれを用いた器、なんてものを作成する場合どれほどの費用が掛かるのか――


「私は組織内の研究で幾度か力が封じられていた素材を解析しました。基本は様々な鉱石の混合物……コスト面とため込める魔力量を考え古の種族が作成した物だったのですが、その中でにラムガザ鉱石も含有していました」

「……つまり、その鉱石を多量に使うことができれば――」

「はい、エルクさん達が望むほどの器を作成することも、不可能ではないでしょう」


 そう述べた後、イーデはさらに考察を進めた。


「ラムガザ鉱石を器に加工する技術については、おそらく問題ありません。そもそも私は鉱石についても研究していますし、鉱石自体は宝石と比べれば加工難易度も高くありません」

「……問題は、鉱石をどうやって大量に得るか、か」

「はい……とはいえ、ヒントはあります」


 それは――視線を向けるとイーデは、


「ラムガザ鉱石は、主に地底に存在しています。普通であれば地底奥深くへ採取に行くというのは困難ですが……」

「……組織は地底にも拠点を作成していたな。もしかすると、拠点周辺に鉱脈があるかもしれない」

「はい、むしろそうした鉱石を得るために、力を用いて地底へ拠点を設置したのかもしれません」


 なるほど、それなら……、


「なら俺は鉱石を手に入れるために叩き潰した拠点がある地底へ向かってみるよ」

「お願いします。必要量については――」


 イーデはさらに説明を進め……やがて話がまとまった段階で、解散となった。






 俺はイーデから話を受けた内容をミーシャへと伝えた。結果、ならば鉱石を入手するために一緒に行動しようではないか、という話になり屋敷の客室で話し合いとなった。


「でも何でミーシャが付いてくるんだ……?」

「わたくしがいなければ、どうやって採掘するのです」


 と、ミーシャは主張する。


「ルディン領に採掘ができる人間はいないでしょう?」

「それはまあ、そうだな……」

「そして、採掘の人員を貸すのであれば、どういった作業を行うのか観察するのがわたくしの役目」

「いや、それはおかしいだろ。何で王女が直接観察するんだよ」

「場所が場所である以上、敵や魔物を警戒して、ですわね」


 ……まあ地底へ向かうのだから当然、凶悪な魔物と遭遇する危険性はある。単なる魔物であれば瞬殺できるが、組織が作成し生き残っていた魔物でも出現したら、対策なしなら大惨事になることは確実だ。


「現状、組織が持つ力を有効利用できるのはわたくしとエルクだけ。不本意かもしれませんが、わたくし達が動く必要はあるでしょう」

「……わかったよ、なら準備はそっちに任せていいか?」

「ええ」

「正直、後が怖いけどな」


 本心から告げると、ミーシャは「大丈夫大丈夫」と応じ、


「将来、セリスの伴侶としてルディン領の正式な領主になる方です。悪いようにはしませんわ」


 本当かなあ、と思いつつもセリスがルディン領にいたら、さすがに無理難題を押しつける可能性はない……いや、あるかもしれないけど、とりあえず無茶を言ってくる回数は減るかな?


「とりあえず今はその言葉、信用しておくよ」

「ありがとうございます。さて、準備については数日で終わります。その後、改めて地底へ向かいましょう」


 彼女の言葉に――俺は小さく頷き、同意したのだった。


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