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緊急会議

 ――翌朝、俺は朝食をとり支度を済ませ、その段階でセリスが訪ねてくる。そして深夜に起きたことを話すと、緊急会議をすることとなった。

 前と同じ小さな会議室で、俺とセリス、そして皇帝陛下と話をする。二人の皇子は外に出ているらしく、今日話をするのは俺を含めて三人とジャノ、という形になる。


「まさかエイテルから水を向けてくるとは思わなかったな」


 皇帝陛下は一連の報告を聞いた後、口を開いた。


「一つわかったことは、組織の目的が帝国の滅亡などといったものではなく、支配という点だ。彼らとしても帝国内で戦乱を起こせば大きく被害が出ると理解し、基本的にそれを望まないという考えを持っている」


 そこまで述べると皇帝陛下は口元に手を当て思考しながら話を続ける。


「取引は、こちらが応じれば間違いなくエイテルとの間で成立はするだろう。互いに利害は一致している。少なくとも、民を犠牲にしたくはない……その共通認識がある以上、決戦までの平和を維持することはできる」

「……応じるのですか?」


 セリスが問う。彼女としては困惑している様子だった。


「最大の懸念は取引が成立したとして……本当に停戦が実現するかどうか、ですけれど」

「例えば組織内において、彼女に反発する者だっているかもしれん。そうした人間が独断で暴れ始めるという可能性も十二分に考えられる」

「では――」

「しかし、少なくとも組織の多くは彼女の言説に従う……そのように私は考える。仮に取引に応じなければどうなるか……魔物化の力は強大であり、こちらとしても手を焼く存在ではある。だが、帝国には圧倒的な軍事力がある。それこそ、騎士団を始め戦力を組織相手に注げば……こちらも手痛い犠牲は出るだろうが、組織の方がよっぽど傷は深くなるだろう」


 犠牲を考慮に入れず、ただ勝つだけなら皇帝陛下の言う通り、組織を如何様にもできるというのは間違いない。こちらは既に全員とまではいかないが構成員に関する情報を所持している。それを利用すれば、組織を壊滅とまではいかなくとも甚大な被害を与えることは可能だ。


「いかに強大な力を持とうとも、帝国と正面切って戦うだけの力は、少なくとも現時点ではないだろう。魔物化の実験などが完了してしまえば状況が覆るかもしれないが……エイテル自身が取引を持ちかけてきたことからも、あくまで現時点で戦うべきではないと考えている」

「……逆を言えば、時間が経てば戦力的に覆るかもしれないと」

「そうだ。後はどう判断するべきか……」


 ――犠牲を出す上で組織を滅ぼそうとするなら、取引を突っぱねて戦う選択をする。極力人々に対する被害をなくそうとするなら、取引に応じて準備を始めるということになる。


「……組織を完全に撲滅するためには」


 皇帝陛下の後に、俺は続く。


「可能な限り情報を得て……決戦に勝つのが望ましいかと」

「うむ、現時点で組織の構成員全てを丸裸にできたわけではない。組織を完全に壊滅させるには、より多くの情報……その中でエイテルが直接提供するのであれば、組織を終焉させるだけの材料は揃うかもしれん」


 ……情報が本物なのかという点だが、そこは調査をすればいい。このような状況なら、皇族達も人をかき集めて調べるだろう。


「うむ、私としては取引に応じるべきだと考えるが、どうだ?」


 皇帝陛下が結論を述べた。それに対しセリスは、


「……私やエルクは、陛下の意思であればそれに従います」

「そうか……ジャノはどう考える?」


 テーブルの上に出ている漆黒の球体へ向け陛下が問う。すると、


『昨夜エルクが会話をしていた雰囲気からすれば、取引内容を含め嘘などはないように思える。エイテルがどれほど情報を持っているかわからなかった結果、必要最小限の人間で秘密裏に作業を行おうとしていた状況と比べれば、取引を受ければこちらも状況が良くなるのは確かだろう……もっとも、取引をする相手が相手であるため、どこまで考えても完全に信用できないというのが難点だが』

「うむ、それは間違いないな……リチャード達にも確認を行った上で、取引に応じようとは思うが……そうした場合、いずれ決戦が待ち受けている。それに対抗できなければ、帝国は終わりを迎えるが……」

「勝てるかどうか、という話ですか」


 セリスが皇帝へ告げる……うん、取引に応じる場合、いずれ来る決戦に備えて色々と動く必要があるわけだが……勝算があるのかどうか。

 エイテルは魔物化の技術開発をさらに進め、ラドル公爵以上の力を持つ存在だって生み出すかもしれない……そうなれば、現状の戦力では太刀打ちできないかもしれない。


「取引をするにしても、勝算がなければただの時間稼ぎにしかならない……その点について話し合いを行いたいが、構わないか?」


 皇帝陛下が問う。俺とセリスはそれに頷き……やがて陛下が俺達へ向け話を始めた。


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