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信頼できる存在

『エルクが組織に対抗するために動く点については我も同意する。というより、エルクが動かなければ騒乱を抑える目処は立たないからな』

「そうだな」


 皇帝陛下は首肯。ますます俺の両肩にプレッシャーがのしかかるわけだが……やりきるしかない。


『可能な限り皇帝を含め、皇族は支援するだろう……しかし、ここで皇族内に組織の構成員がいた場合は、こちらの計画そのものが破綻する』

「それは否定できないな」

『故に、エルクが主導的に動くが、その方針については一切明かさないということでどうだろうか』


 ……ジャノの言葉に室内は一時沈黙する。

 言いたいことは理解できる……黙っていると次に発言をしたのはスレイ皇子。


「つまり、私達にもエルク君の動きを教えない、ということか?」

『そうだ。組織に対しどう動くかを秘匿していれば、少なくとも相手が罠を張って待ち構えている、といった自体に陥る危険性は低いだろう』

「……なるほど、しかしその場合エルク君の支援そのものについて、想定しているよりも限定的になってしまうが」

『そこは仕方があるまい』


 ジャノが言う……なんだか勝手に話を進められている状況だけど……ジャノの言い分も理解はできるため、口は挟まない。


『我としては、妥協点としてこういった提案をしているが、どうだ?』

「……エルク君はどう考えている?」


 スレイ皇子が問う。俺は……もし「ジャノの方針には従わず、皇族と一緒に組織対策を行う」ということを表明しても、きっと俺の決断だからとジャノは『仕方がないな』と言いつつ受け入れてくれるだろう。

 だが、相手はどこに潜んでいるのかわからないというのもまた事実であり……俺は、少し間を置いてから喋り始めた。


「……自分としては、皇族の方々を信じたい。しかし、今回の一件は絶対に失敗することができないもの。最大限に警戒し動くとすれば、ジャノの意見に従うのも道理だと思います」

「……そうだな」

『ただ、その中で確実に信頼できる存在はいる』


 ジャノはさらに続ける。それが誰なのかは明白――セリスだ。


『皇女なら、エルクと共に行動して問題はないだろう』

「……結局、動くのは私とエルクの二人だけ、か」


 セリスはそう言いつつ、腹をくくったかのように表情を引き締めた。


「陛下――私も、ジャノの言葉自体に一理あると考えます」

「うむ、確かに皇族だからと気を許していては、解決できない問題なのかもしれん」


 皇帝陛下も納得するように述べる……リチャード王子やスレイ皇子は無念そうな顔をしているが――


「しかし、私としても二人だけ動いて成果が上がるのか、という疑問を持っている」

『うむ、それも事実だな』

「よって、こうしよう。現状、組織側は表立って動いていない……鳴りを潜めている期間がどの程度になるかわからないが、ひとまず相手が動こうとするのを牽制し、時間稼ぎを行う」

『その間に、調査を進めろと?』

「そうだ。まずは、そうだな……期間は短いが、十日だ。十日後に今日のように集まり、進捗を報告してもらう。そして、集めた情報などを基に、方針を継続していくかを判断する。どうだ?」


 ……都度確認するというわけか。成果が上がらなければ動き方を切り替える、というのは妥当か。


『うむ、異論はないな』

「……実際の動き方については今から話すことになるが、エルク君。基本的にはそのような形になりそうだが」

「問題ありません」


 俺が頷くと皇帝は俺と目を合わせ、


「うむ、ならば本題に入るとしよう……君に大きな負担を強いることになる。苦労に見合っただけの報酬を約束しよう」

「ありがとうございます」


 正直、報酬については魅力的に思えるわけではないが……皇帝陛下は対価を出したいという意思がある様子。ありがたくもらっておくのが良いだろう。

 そして、俺達はいよいよ本題――組織に対する話し合いを始める。それにはジャノも加わり、方針については次第に固まっていった。






 ――会議は昼まで続き、俺は少なからず疲労感を覚えつつ部屋へと戻った。そのタイミングで昼食をとり、午後からはとりあえず自由時間となったのだが……。


「早速動いた方がいいだろうな……」

『決まった方針通り動くのか?』


 ジャノが問い掛けてくる。俺は椅子に座った状態で窓を眺め、


「……ああ、とはいえ俺が単独で動くというのは怪しまれるし、基本的にはセリスとの二人行動だ。まずはセリスに確認をとってから、だな」


 ちょっとばかり体が重たいけれど、いつ何時敵が攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない。であれば、さっさと動いた方がいいだろう。


『声に疲れが出ているが、大丈夫か?』

「肉体的な疲労じゃなくて、精神的な疲労だから問題はないよ……とりあえず、セリスと話をしよう――」


 そう言った矢先、部屋の外で足音。その気配はセリスのもの。彼女もどうやら俺と同じように早速動こうという考えのようだった。


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