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対面

 部屋が開かれると、セリスが先んじて入室し、それに続いて俺も部屋に入る……中は小さな会議室。窓のある四角い一室で、中央に円卓とそれを囲むように椅子があり、扉と反対にある窓を背にして三人の人物が並んで座っていた。

 共通しているのは全員がセリスと同じように青い髪を持っていること……中央にいるのが白い法衣を来た年配の男性……いや、こういう表現はよそう。


 座っていたのは――皇帝陛下。セリスの父親にしてゼルティア帝国の、ルジウス皇帝であった。


 その両脇を固めるのが、セリスの兄達……俺から見て右に座っているのが長男であり次期皇帝であるリチャード皇子。そして左にいるのが次男のスレイ皇子。座っていても明瞭なのがリチャード皇子の方が背丈があり、スレイ皇子はどこか線が細い印象を受ける。

 で、顔立ちは皇帝譲り……精悍かつ迫力のある皇帝陛下を見て、俺は当然ながら部屋に入って固まる。


 顔を合わせるのは、セリスのこともあるため一度や二度ではないのだが、いつ会おうとも緊張する。まあこれは当然だ。相手は皇帝陛下なのだから――


「座ってくれ、エルク君」


 そして皇帝が述べる。俺はちょっと体がカチコチになりつつ、着席。その右横にセリスが扉を閉めた後、座った。


「……さて、ここなら重臣達の耳も届かない。忌憚なく、お互い腹を割って話すとしよう」


 皇帝陛下が言う。こちらとしては元よりそのつもりなので小さく頷く。


「まずは状況の確認からいこう。現在時点でエルク君のことを把握しているのは、帝都においてこの部屋の中にいる者達だけだ」

「つまり、皇族だけ……しかもごく一部ですか」


 俺が言うと皇帝陛下は首肯する。


「うむ、私の判断で情報を留めている」


 それは――問おうとしたが黙り込む。あんまり言及するのもまずいかなと思ったのだが、そんな要素を察したか、


「エルク君、遠慮せず言ってくれ」

「……では、その、この場だけで留めているということから考えると、これ以上話を広げると組織の人間に情報が伝わってしまう、と」

「そうだ」


 皇帝陛下は肯定すると、さらに説明を加える。


「君とセリスがミーシャ君と協力し組織の拠点を壊滅させた……その結果、組織の幹部や構成員に関する情報を得ることができた……しかし、その情報によって全てが解き明かされた、と断言することはできん」

「捕捉できていない構成員がいるかもしれない、と」

「だからこそ、この場に留めている……現在、帝国内にいる組織構成員はリーガスト王国側の騒動に対し静観している。しかし皇族に情報が伝わっていると知れば、彼らは動き出す……最悪帝国内で内乱が勃発する」


 それは未然に防ぎたい――皇帝陛下がどう考えているのかは、明瞭に伝わってきた。


「しかし、情報を秘匿している時点で調査する人員もあまり用意はできん。皇族と言えど、重臣抜きで信頼できる人材というのは、希少だからな」

「……当面の目標は、内乱を抑えるため組織構成員の完全把握と、残っている拠点の位置を特定すること、ですね?」

「うむ、組織の内部構造を丸裸にして初めて、内乱勃発という最悪の事態を防ぐことができるだろう」

「――ただ、正直なところ現実的に厳しいというのはわかっている」


 次に口を開いたのは、皇帝陛下の右隣にいるリチャード皇子だ。


「こちらは重要な情報を得ることはできているが、組織の根はずいぶんと深い。状況的にいつ何時内乱が始まってもおかしくはないのだが……奇跡的に回避できている、というのが実情だ」

「内乱が始まる寸前で踏みとどまっている、という形ですね」

「その通りだ。ここから立て直して内乱を起こさせないようにする……というのは、極めて難しい。しかし、皇族の意志としては可能な限り争いはない形で、というのを理想として動こうとしている」


 そこまで言うとリチャード皇子は俺を見据え、


「ここで話し合いの席を設けたのは、君に協力を打診するためでもあるのだが……」

「自分が役に立てるのであれば」

「ありがとう……とはいえ、難題ばかりだ。どこから手をつけたものか――」

「その前に一つ、いいかい?」


 と、ここで割って入るようにスレイ皇子が口を開く。幾分高い声を耳に入れつつ、俺は頷いた。


「はい、なんでしょうか?」

「この席にもう一人……いや、人と数えるのは微妙かもしれないが、話し合いを行いたい存在がいる」

「それは……ジャノのことですか?」

「そうだ」


 俺はセリスを見た。すると彼女は頷いたので、俺は心の中でジャノへ問い掛ける。


(出られるか?)

『問題ない。こんな場所で姿を現すとは、緊張するな』


 嘘つけ……胸中で呟く間に、漆黒の球体がテーブルの上に姿を現す。それを見て皇帝陛下を含め正面三人は目を細めた。


『初めまして皇帝陛下。今はジャノと名乗っている……我の事情も把握しているのか?』

「ああ、セリスの報告書によって」

『ならば、いくつか確認させてもらおう』


 俺と接する態度と変わらぬまま、ジャノは皇帝陛下へ向け問い掛けた。


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