表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/121

次の一手

「……師匠は謀略を施すのが上手い人だし、公爵が滅んだとあればまず原因を調べようとはするとは思う。その間はおそらく動きを止める」


 セリスの発言。それを受けてミーシャは提案を行う。


「ならば、公爵の件については大々的に公表しましょう。多少理由付けは必要ですが、組織とは関係のない部分で公爵に事情聴取しようとした。その際に突如暴走し魔物化した、と」

「組織と関係がない、という点が何より重要だな」


 俺はミーシャの言葉を受けてそう発言する。


「組織と関連性がない、ということをきちんとわかってもらえないと、帝国内にいる組織所属者は動き出すぞ」

「セリス、何か案はありません?」

「……公爵は日頃から色々と動き回っていた人で、国としても警戒していた人物。相談すれば、理屈はいくらでも付けられると思う」

「ならば、疑われないような理由を選ぶとして……そこからは時間との勝負ですわね。わたくしはリーガスト側で動き、帝国に顔を出すのはこれで最後にしましょう」

「あくまで組織に関連する人間はリーガスト王国側しかわかっていない、という風に演出すると」


 これが成功するかはわからないが……普通に公爵のことを公表するよりは、敵も動きを止める可能性は高いだろう。


「ひとまずそういった方針で時間稼ぎをするとして……セリスの師匠を含め、動向を探ると」

「敵には重臣も多数いる。調査をするにしても信用できる人員はそれほど多くないことを考えると……」

「何より優先すべきは、魔物化の仕込みをしている人員の特定と、敵の拠点などの把握か。事前に敵の状況がわかれば対策のしようもある。ただここはミーシャの言う通り、時間との勝負だな」


 セリスの師匠がどこまでおとなしくしてくれるか……最悪のパターンとしてはこちらが調査している間に気付かれることはもちろん、動きが止まらず魔物化の仕込みをされる人間が増えることか。


「……俺はどうすればいい?」


 ここで問い掛けると、セリスは小さく息をつく。


「ミーシャが帝国内で動くことが難しい以上、公爵のように魔物化した人間に対抗できる人は、事実上エルクだけになる」

「ミーシャ、セリスに魔力の仕込みをして多少なりとも援護することは可能か?」

「できますし、魔力を使用しなければ仕込みは持続すると思いますが、あまり多量に付与することは厳しいですわ」

「……現時点では、公爵のような存在が現れればセリスの援護がないと辛い状況だ。俺が戦うにしても、やり方を考えないと」

『――まあ、ここは一つしかなかろう』


 ふいにテーブルの上に存在する球体、ジャノから声が聞こえた。


『エルク、覚悟を決めた方がよさそうだ』

「……つまり、俺が単独で倒せるように訓練が必要だと?」

『そうだ。ミーシャ王女の力は、いざという時に残しておくべきだろう』


 ジャノの提言に俺は沈黙する……元より、今後は公爵くらいのレベルの敵を倒せるように鍛錬を行う気ではあった。しかし、果たして時間があるのか……。


「そもそも、エルクは自由に動けるようになりますの?」


 ふいにミーシャの疑問。うん、そこについても考えないといけない。

 領主である俺は、基本的にルディン領からは動けない……より正確に言えば動くことはできるが、怪しまれる。


「そこについては解決策がある」


 と、セリスが話し出した。


「公爵は頻繁にエルクの屋敷を訪れていた……公爵が滅んだ事実を踏まえ、エルクに事情を聞くという理由で帝都に呼ぶことができる」

「なるほど、そういう名目ならば怪しまれることはないか」

「加えて、エルクの所に公爵が来ているという事実から、エルクが力を持っていることは露見していないと思う」

「ああ、俺もそれは思うよ……ここは有効利用したいところだな。ただ、現時点では俺の力は見栄えが悪いし、表立って活動はできないぞ」

『現在進行形で見た目を変えているのだが、まだ時間は掛かるだろう』


 ジャノも口添えする。俺の状況を確認すると、今度はセリスが発言した。


「わかった。ひとまずエルクが帝都へ赴けるように手はずを整えるから、それまでは修行を続けていて。ミーシャの方はリーガスト側で活動を。あくまで自国内で動くことで、帝国側に影響がないように思わせることが重要だけど……」

「そこは上手くやりますわ。わたくし達が優先すべきは怪しまれないよう立ち回ることと、何よりエルクの存在を悟られないようにすること」


 彼女の発言に一時客室に沈黙が生じる。


「公爵が魔物化したという事実についても、セリスが対応したということにしましょう。親族であるセリスが倒したという点については、それほど違和感なく経緯などを説明できるでしょう」

「そうだね……私としては師匠に警戒されるだろうけど、向こうも公に私に攻撃を仕掛ける可能性は低いだろうし、注意しつつ場合によってはエルクに助けてもらう……というのが良いかな」

「あなた自身が倒せるように、というのは考えませんか?」


 ミーシャからの質問にセリスは沈黙した。その顔からは難しいだろう、という見解が伝わってきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ