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一撃で倒せる力

 セリスだけに注目する黒い炎をまとう公爵に対しての攻撃――だが剣が届く寸前、公爵は反応した。

 突如振り返ると腕で俺の剣をガードする……魔物を両断する剣である以上、まともに食らえばタダでは済まない……そのはずだったが、俺の剣を公爵は受けきった。


 強い……そう感じさせられる状況――と、ここでジャノの声が頭に響く。


『相当な力を与えられている。それをほとんど露出せずというのは、よほどの技術がなければ難しいだろう』


 その声と同時、公爵は腕を振って俺の剣を弾く。こっちは一歩後退し警戒を強め、俺へと向き直った。

 セリスと挟んでいる状況だが、反応を見る限りこちらが攻撃を仕掛けても即座に対応できる様子――俺の攻撃を受けても怯んだ様子がなく、公爵の気配はさらに濃くなるばかり。


 おそらく、黒い炎に取り込まれた時点で理性など喪失しているだろう……俺は剣を握り直す。初撃で仕留めることはできなかったが、防御した腕の強度についてはおおよそ把握した。次は、確実に――そう思い一歩踏み込もうとした寸前、公爵が動いた。

 その狙いは、セリス。俺が動き出すよりも早く、彼女目がけ突撃した。


「っ!?」


 短く呻きながら俺はその背中へ向け攻撃を仕掛けようとする。だが公爵の動きが速い。セリスも突撃から逃れることはできず――公爵が拳を放つ。セリスはそれを杖で、受けた。

 刹那、彼女の体が大きく吹き飛ぶ――が、防御に成功し怪我はない。そこに俺が公爵の背に向け斬撃を放った。今度こそ、仕留めるという気概を大いに持った一撃に対し、公爵はまたもすぐさま振り返り腕で防御した。


 剣と腕が激突する。直後、刃が公爵の腕に入った。いける、と確信した矢先、俺の剣が公爵の腕を両断した。

 すると公爵は即座に横へと逃れた。俺とセリスから距離を置くと、黒い炎を揺らめかせながら立ち止まる。


 そこに吹き飛ばされたセリスが戻ってくる。俺は彼女へ視線を一度向けた後、


「大丈夫か?」

「うん、平気……私の魔法はたぶん、通用しない。下手に仕掛けたら危ないかも」


 そう言いながらセリスは杖を構える。


「実はミーシャから強化魔法を受けていて、体内に魔力を仕込んである。さっき公爵の攻撃を受ける寸前にその魔力を使って防御した……もしミーシャから魔力をもらっていなかったら、危なかったかも」

「……ミーシャに感謝だな」


 俺は言いつつ公爵へ視線を移す。両断した腕だが、斬った部分に黒い炎がまとわりつき始め、徐々に炎が腕の形をとっていく。

 再生――黒い炎には体を形成する力があるらしい。


「再生能力まであるとしたら、生半可な一撃では通用しないな」

「文字通り一撃で倒せる力が必要だと」


 セリスは即座に状況を理解し、俺へ告げた。


「エルク、あなたにミーシャから付与された力を全て注ぐ。その強化で倒しきるしかないかな」

「失敗したらどうする?」

「私がミーシャのことを呼びに行く。転移魔法を使えばそう時間は掛からないと思う」

「……わかった」


 こういう会話はしたものの、必ず次こそ決着をつける……そうした決意を胸に、剣を構える。

 セリスもまた杖を構えた。途端、公爵の体から黒い炎が噴き出た……いや、もうその体は力に乗っ取られ、公爵という存在はこの世から消えただろう。


「……仕掛ける前に一つ。こんな無茶苦茶な力を付与したのは、誰だと思う? 公爵は明らかに仕込まれていることも気付いていなかったが」

「私の師匠だろうね」


 セリスはそう返答した……俺もなんとなくそう予想はしていたのだが。


「方法についてはまあいいとしても、こんな仕込みをした理由は一体……?」

「誰かが公爵のことを捕まえようとしたら、こうなるように仕込んでいた……となったら、口封じかつ帝国に傷を与えようという意味合いなのかも。仕込んだ力が効果を発揮しなくても外部協力者として資金を供給してもらえる。もし組織との関わりが露見して、捕まりそうになったら……口封じもかねて大暴れしてもらおう、と」

「だとするなら、俺が近くにいて幸いだったのかもしれないな……この力、帝国の騎士達では対処が難しいだろう」

「うん、そうだね」


 彼女が返答した時、公爵が動き出す――愚直なまでの突撃。それに対し俺は駆け出し、迎え撃つ体勢をとる。

 そこでセリスの強化が握りしめる剣へと収束した。公爵は彼女の魔法に気付いたのかわからないが……動きは一切変わらなかった。


 再び剣と腕が激突することになる。だが、先ほどのように腕を両断しただけではダメだ。もっと、力を――俺は自分自身が持つ魔力を高める。そしてセリスからもらった魔力と結びついて、先ほど以上の力を刀身にまとわせる。

 対する公爵は――それでも動きは変わらない。いや、もしかすると止まれないのかもしれない。そんな風に思った直後、俺と公爵の腕が、激突した。


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