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近づく決戦

 ラドル公爵が屋敷を訪れた数日後、今度はセリスがルディン領へとやってきた。その目的は、現状の報告だ。


「まず、ミーシャがリーガスト王国で動き出したタイミングより前に、彼女が帝都に来訪した」

「……時間が掛かったのは帝都へ赴いていたためか。その目的は当然、陛下に話をするためか」

「うん」


 頷くセリスに対し、俺は少し溜めてから問い掛ける。


「今回はその報告というわけだ……どうするんだ?」

「まず、私の判断でエルクのことやラドル公爵のことは報告した」


 ……その点についてはいずれ語ることになっていたので、俺としては驚かない。むしろタイミングとしては妥当だろう。


「ああ、そこはセリスの判断でいいと思ったのであれば特に言及しないよ」

「そう……結果として国はラドル公爵を含め、この騒動を解決するために動くと決めた。今はリーガスト王国でミーシャが行動しているわけだけど、それはいずれ帝国にも影響することになる」


 始まるか……そこで俺はセリスへ尋ねる。


「ラドル公爵を含め国の重臣を捕まえようとすれば、騒動が起きるだろう。そこの対策はどうだ?」

「今は秘密裏に準備をしているけど……露見しないよう慎重に動いているから、時間が掛かるかもしれない」

「俺の出番はあるのか?」


 問い掛けにセリスは沈黙する。その表情はわからないといった感じだ。


「……騒動が起きないよう準備を進めているけれど、相手がどう動くかわからない」

「そこは仕方がないさ。問題は俺の出番となった時、どういう口実でルディン領を抜けるか、だけど」

「そこは国の正式な通達として理由付けはできるから、なんとかなると思う」

「……陛下に話が通っているなら、口実としてはクリアできるか」


 なら後の問題は、見た目だな。


「現在ジャノと一緒に力の見た目を変えている」

「見た目……? ああ、黒いままだと目を付けられるかもしれないもんね」

「そうだ。ただこれは多少なりとも時間が掛かる。もし騒動が起きて戦うことになったら……それまでに間に合うかどうかはわからないな」

「そこはどうにかフォローできるようにしておくから」


 セリスは言ったが……まあ混乱がないように見た目を変える作業は続けた方がいいだろうな。


「大々的に動き出したら改めて連絡するよ」

「わかった……それと、ラドル公爵についてだけど」


 使い魔を通して来訪したことは連絡している。セリスはこちらに視線を向けた後、


「それについてだけど、公爵を誘い込んで捕まえるのに上手く利用はできると思う。ここに来る前に一度ミーシャとは打ち合わせをした。場合によっては最初に捕まえることになるかも」

「無用な混乱を避けるために、か……」


 公爵は俺の前世で読んでいた漫画で反乱の首謀者という立場だった。現在も野心は胸に秘めているだろうから、帝国が捕まえようとしても全力で抵抗するに違いない。

 色々考えていると、セリスはさらに話を進める。


「公爵は外部協力者だけど、組織にとって重要人物なのは間違いない。公爵の屋敷などを調べれば、まだ見つかっていない組織の拠点なんかも発見できる可能性がある」

「そっか……やり方としてはミーシャに直接話をして情報を得た、という感じで連絡すれば来てくれるかな?」

「たぶん。私達としては絶対に動いていることが気取られないよう注意しないと」


 ……かなり神経を使う作業をしている様子。ただ俺は何もできないので少しもどかしく思う。

「セリス、大丈夫か? 無理とかしてないか?」

「このくらいは平気。そういうエルクは?」

「俺は剣を振っているくらいだからな……着実に修行は進んでいる。凶悪な魔物が出てきても、勝てるように準備はしておくから」

「うん、わかった」


 セリスは頷いた後、話をまとめる。


「エルクは私が連絡するまで動かないようにお願い。今は下手に行動して組織側に気取られないようにするのを最優先にしたいから……私も、今日以降はここに来ることはできないかも」

「使い魔を通して連絡はできるだろ? ひとまずそれでやりとりをしよう」


 俺の言葉にセリスは頷き――屋敷を去ることとなった。






 セリスが屋敷を離れた後、俺は改めてジャノと話をする。


「いよいよ決戦が近づいてきたな……陛下にも話を通しているのなら、騒動が起きたとしても俺は動きやすくなったと思う」

『残る問題は力の見た目か。これは少し急いだ方がよさそうだ』

「そうかもしれないな……後はセリスとミーシャ次第だ」


 二人に任せっきりになるのはなんだか申し訳ないけど、立場上俺にできることはない。


「組織側はリーガスト王国で騒動が起こって浮き足立っていると思うんだけど……幹部全員を捕まえるのは、かなり大変そうだな」

『皇女の師匠が名を連ねているのだったな。相手側としても簡単にやられるわけにはいかない……相当な抵抗が予想される。問題は敵の戦力がどの程度残っているのか』

「俺が動いてあっさりなくなるくらいの戦力だったら良いけどな……」


 戦闘ではなく戦争になってしまったら、どうなるのか……不安を感じつつ、俺はセリス達の作戦が成功するよう、祈るような気持ちになった――


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