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地底の拠点

 敵の拠点……それが遠目ではあるが肉眼で確認できた矢先、俺は拠点から魔力を感じ取った。魔物とはおそらく違う……建物自体に力が付与されている。


「あの拠点……俺やミーシャが持つ力によって作られているみたいだな」

「の、ようですわね」


 俺の言葉にミーシャは頷き、


「あれでは外部からの攻撃で破壊することは不可能でしょう」

「となると近づいてどうにかするしかないと」

「ええ……元よりそのつもりでしたので、方針についてはまったく変わりませんが」


 会話をしている内に、俺達は地底へと辿り着いた。拠点までの道のりは一直線になっているようで、明かりの範囲の外である拠点についてもほのかに光が見える。


「拠点内部について調べましょう」


 そう述べてミーシャが騎士へ指示を出す。距離が近くなったので、改めて拠点について索敵魔法を使うというわけだ。

 地底で距離も肉眼で見えるレベルなので、索敵魔法を使えば気付かれる可能性が高いのだが……この時点で相手は気づいているだろうし、正直あまり関係はないか。


 作業を見守っていると、やがて騎士が魔法を使い終えてミーシャへ報告を行った。


「魔物は内部にいるようですが、先ほどのような力を持っている可能性は低いでしょう。拠点自体が魔力で覆われているため、完璧に調査できたわけではありませんが……」

「魔力によって索敵魔法が阻害されていると」

「はい」

「……魔物以外に人はいますか?」

「人員らしき気配は複数。ただこの距離では魔物化しているかどうかわかりません」


 騎士の報告を聞いたミーシャは「わかりました」と応じた後、


「ここで引き返すような状況ではありませんね。一気に踏み込み拠点を制圧します。エルク、セリス、よろしいですね?」


 ――俺達が相次いで頷いた時、騎士達の気配が変わる。戦闘態勢に入り、拠点へと体を向けた。


「騎士達が先行します」


 端的なミーシャの言葉。それにも承諾すると同時、彼女は叫んだ。


「拠点へ! まずは敵を逃がさないよう、拠点周辺を固めなさい!」


 騎士達が動く。ミーシャの強化によって俊敏になった彼らは、地底を駆けていく。

 少し遅れて俺とセリスも駆ける。目の部分に魔力を集めることによって、暗闇ながら魔力で周囲の構造などを把握することができる。


 地形的に言えばここは地底の中でも渓谷に近しい場所のようだ。左右には岩壁が存在し、障害物もなく真っ直ぐ拠点に道は続いている。

 そして先行する騎士が、拠点へ辿り着いた。途端、地底に響く魔物の咆哮が。敵はこちらの動きを察知し、魔物を拠点から出したようだ。


 しかし、どうやらそれは先ほど交戦した竜と比べ魔力量は少ない……途端、騎士の攻撃によって魔物が死滅する。次いで現れた個体も相次いで騎士の手によって撃破されており、戦況は明らかに俺達側であった。

 このまま制圧できれば……そんな考えと共に俺とセリスもまた拠点へと辿り着く。外観はドーム型の建物であり、間近で見ると改めてジャノと同質の力を感じ取ることができる。


 建物の中はどうなっているのか……騎士がまたも魔物を倒した。やはり先ほど出現したような竜は一体だけで打ち止めなのか、建物から出現する魔物は、地上に存在していた砦の中にいた個体と似たような能力であった。


「半数は建物の周囲を確認! 残る半数とエルク、セリスで建物内の制圧を行います!」


 ミーシャが叫ぶ。次いで彼女は俺とセリスに目を向け、


「お二人に託します。よろしいですね?」

「ああ、任せろ」


 俺は答えると剣を握りしめながら建物の中へ。無機質な白い石のような健在で形作られた建物であり、建物内部は地底とは思えないほどの白い光で満たされていた。

 視界の確保は問題なく、俺達は突き進む。構造は中央に奥まで進める通路があり、その左右に扉が並んでいる形。


「一つ一つ確認していく必要があるか?」


 俺は呟きながら入口から見て一番手前の扉に目を向ける。見た目的には鉄製なのだが、俺が蹴り飛ばせばあっさりと壊れそうな雰囲気だ。


「強引に突破するか?」

「私に任せて」


 セリスが言った。彼女が杖を振ると――勝手に扉が開き、中を確認することができた。

 そこはどうやら、食堂のような広い空間……と、そこに複数の人間がいた。こちらの動向を確認し、既に対応策は準備していたようで、


「放て!」


 その中の誰かが叫ぶと同時、数多の魔法が扉を挟んで廊下にいる俺達へ放たれた。


「――ふっ!」


 それに対し、セリスが即座に対応した。杖で地面を叩くと、扉の前に結界が出現。魔法が直撃し、轟音が鳴り響いた。

 一瞬しか確認できなかったが、室内にいる人間からは明らかに魔物の気配を感じ取れた……ここにいるのも魔物化した人間で間違いなく、俺は轟音がなおも響き続ける中、隣にいるセリスへ告げた。


「魔法攻撃はいずれ途切れるはずだ。そのタイミングに合わせて、一気に踏み込む」

「わかった」


 セリスは同意。なおも魔法は結界を直撃するが……竜の突撃を押し留めた彼女の結界だ。壊れることはない。

 俺は静かに呼吸を整える。魔法が止まるタイミングを見計らい、仕掛ける……考える間に、攻撃が止んだ。扉を挟んで部屋の中には魔法による粉塵が立ちこめる。


 俺は集中力を高め――気配を探った後、敵に動きがないのを確認し、部屋の中へ踏み込んだ。


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