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三人ならば

 ミーシャが人を呼んでいる間、俺とセリスは周辺の警戒を行う。ちなみに転移魔法を使って連れてくるらしいので、山中ではあるがミーシャの言う通り一時間程度では帰ってくるだろう。

 俺は魔物の気配を探りつつ、とりあえず地中に意識を向けてなんとか探れないか試してみる……そうして時間がある程度経過した時、


「ジャノ……このまま拠点が見つかったとしたら、決戦の可能性もあるんだが……いけるかな?」

『敵の戦力がどの程度かわからないから何とも言えないな』


 俺への問い掛けに対しジャノはずいぶんと冷静に語る。


『ただ、先ほどの竜……あれくらいの力を持った魔物が多数いるのであれば、さすがに退却すべきだろうな』

「けど、その可能性は低いんじゃないか?」


 明確な根拠があるわけじゃないが……俺の言葉にジャノは同意するようで、


『うむ、敵としてもこちらが動き出すより先んじて攻撃する方が良いだろう……ああいった魔物がストックしてあるのなら、今度は群れとなって押し寄せてもおかしくはない』

「けどそれがない以上は……」

『竜ほどの力を持つ魔物は打ち止めである可能性が高そうだな。とはいえこれは推測でしかない。拠点に踏み込んだら多数の魔物がいる、という事態もあり得る』


 そうなったら危機的状況だけど……しかしジャノは自身の言葉を否定した。


『だが、今は守るよりも攻めるべきだろう。向こうの態勢も整っていないだろうから、今が好機……無論、相応のリスクはあるが』

「……警戒は続けるけどおそらく何も起きないだろうな。ただ、敵としては拠点の場所を知られないよう全力で対策を立てるだろう」

『今からやって間に合うものなのか?』

「どうだろうな。俺やミーシャが持つ力なら、短時間で色々と処置はできるかもしれないが――」

「エルク」


 ふいに、横から声がした。視線を転じるとセリスが近寄ってきていた。


「私も索敵魔法を使ってみたけど、異常はないね。地中にも向けてみたけど、地上を調べるのと勝手が違うみたいで、上手くいかなかった」

「ここはミーシャの帰りを待つしかなさそうだな。彼女なら的確な人選によって、地中を探せる人材を連れてくるだろう」

「そうだね」


 頷くセリス……ここで少しの間沈黙が生じたのだが、


「……エルク、もしさっきと似たような力を持つ魔物が出てきたら、どうしようか?」

「ひとまずミーシャの支援があればセリスの魔法で動きを止められることがわかった。動きを止め、俺が一気に仕留める……というやり方でどうにか立ち回るしかないな。リーガスト王国の騎士達に援護してもらえれば、なんとかなりそうな気がする」

「問題は複数いる場合だね」

「敵が俺達のことを把握しているなら、ミーシャがいない今を狙って魔物をけしかけてきてもおかしくないけど、それもなさそうだし複数体いる可能性は低いんじゃないかな」


 俺の考察にセリスは同意するように頷きつつ、


「……もし地中に拠点があって、それを叩き潰せば解決すると思う?」

「どうだろうな……というか、終わって欲しいんだけど」


 俺はため息をついた。なんというか、力を得てからここまで修行と戦いばかりだ。セリスと共に魔物を倒してから少し間を置いているのだが、その間は剣を振り続け力の制御に必死だったからなあ……力を求めていたのは間違いないけど、もうちょっとゆっくりできる日があっても……。

 ただまあ、それはセリスも同じだろうから口には出さないけど……そんなことを考えていると、セリスは小さく笑った。


「エルクは慣れないことをしているからね」

「まったくだよ……そういうセリスは大丈夫か? 今日、単独行動をしていたってことは俺と共に魔物を倒して以降も活動していたんだろ?」

「適宜休息はとっていたから大丈夫。さすがに疲労がゼロというわけじゃないけど……ここで逃げるつもりはないよ。最後まで戦う……ただ」


 と、彼女は悔しそうな表情を浮かべる。


「ミーシャの援護がなければ私は魔物を倒せない、という点は不甲斐ないと思っている」

「……さっきの魔物は、俺が単独で倒せるような敵じゃなかった」


 セリスの言葉を受け、俺は口を開いた。


「正直、一人で戦って勝てるような相手じゃないんだ……セリスがもどかしく思う気持ちもわかるけど、誰かが欠けたら勝てない敵……俺とセリス、そしてミーシャの三人なら倒せる。そういう認識でいいんじゃないかな」

「私だけが気負う必要はない、と」

「そういうこと」

「……いつしか、私も異名通りに振るまい、勝たないとって思うようになっていたかな」


 そこでセリスはさっぱりとした表情を見せた。


「蒼の女神なんて、誇大表現もいいところだと思っていたけど……そうであっても、私はみんなにそう思われるために、強くならないとって思い込んでいたかもしれない」

「今回の敵だって、異名通りなら自分だけで倒せなければ、って思っていた?」

「そうだね……ありがとう、エルク。少し気持ちが楽になった」

「俺は何もしていないよ」


 こちらが肩をすくめ応じた時、ミーシャの声が聞こえた。帰ってきたらしい。


「……行こうか」


 そう告げ、俺は先んじて歩き始めた。


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