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制圧と索敵

 その後、交戦を続けた結果、俺達は犠牲者もなく砦の制圧に成功した。魔物化した人間は俺が対応し、二人目からは見つけた瞬間に即座に接近し、倒す……というのを三回ほど繰り返した後、敵の姿が見えなくなった。

 砦の中に気配はなくなった……俺は騎士達と共に一度外へ。ミーシャが待っており、犠牲もなく作戦が成功したということで嬉しそうだった。


「最高の結果ですわね。このまま資料を回収し、相手が言い逃れできない状況を作りましょう」

「それはいいんだが……あまりにも手薄すぎないか?」


 俺の疑問に対し、ミーシャは首を左右に振る。


「拠点に常に人がいる、という状況ではないでしょう。この組織の幹部はそれこそ、国の中枢にいるような人間ですし、この拠点にいるのは主に研究員ということなのでしょう」

「……本当か?」


 俺が疑問を重ねる。そこでミーシャは眉をひそめ、


「何か思うところが?」

「いや、根拠はないよ。ただ、警戒はしておいて方がいいような気がする……騎士に付与した魔力はまだ残っているし、戦闘は継続できる。だが、もしこれが仮に罠だとすれば……」

「わかりました。周辺の索敵を行いましょう」


 ミーシャは決断し、近くにいた騎士へそれを指示する。


「また、中にある資料の回収を」


 指示を受け、騎士達の一部は砦の中へ入る。その最中に魔法を使える騎士が索敵魔法を使用する。

 俺もまた可能な限り周囲の気配を探る……そこで、


(ジャノ、そっちは何か感じるものはあるか?)


 心の中でジャノに問い掛ける。


(魔物の気配はあるのか?)

『現状ではないな。砦の中にいた魔物の類いは全て倒した。脱出路などの可能性も考慮して地底なども調べてみたが、反応はなしだ』

(ということは、とりあえず砦の中に隠れた敵はいないと)

『おそらくな。ただエルクの言う通りあっさりし過ぎている……というかそもそも、この砦の中に組織の長と言うべき存在がいないのは間違いないだろう』


 戦いはまだ終わっていない……というのは間違いないが、拠点を潰したのならここから先はどうすべきなのか。


(……気配を引き続き探すしか方法がなさそうだな)

『というより、拠点は一つだけなのか?』


 ジャノが問う。それに俺は沈黙した。


『組織の長が仮に国の偉い人間だとすれば、人の目を避けるような拠点にいないことは間違いないが、この場所は研究施設を担っていたのだろう? だとすれば、ここだけで終わらない可能性がある』


 まだ拠点があるのか……それは山中にあるのか? それとも、この周辺にないのか?


『少なくとも周辺に気配はない……が、我の気配感知もどれだけ当てになるものかわからんため、完全に信用するのは避けてもらおうか』

(そうだな……相手としては対策だってするかもしれないし……いや、研究している力の大きさを踏まえると、隠蔽工作をすればバレないと考えている可能性もあるのか……?)


 色々と疑問が湧き出る中、やがて索敵魔法を使い終えた騎士がミーシャへ報告を行う。彼女はその内容を聞いた後、俺へ向け話し掛けてきた。


「周辺に魔物の気配はないとのこと」

「なら、大丈夫かな?」

「ただ、一つ気になることが」


 気になること? 疑問に思っているとミーシャは続きを語った。


「少し距離はありますが、山中に人の気配を感知したと」

「人……猟師とかではなくて?」

「明らかに魔法を扱う人物の魔力だったそうですわ。より詳細を調べようとした時、どうやら索敵魔法の存在に相手は気づいた様子」

「組織の人間であるなら、様子を見に来るかそれとも異常事態だとして退却するか」

「こちらの動きがバレても構いませんから、その人間について調べますか」


 ミーシャは言うと、騎士に再度索敵魔法を行使するよう指示。俺はその光景を見守りつつ、ジャノへ尋ねる。


(ジャノ、何かわかるか?)

『我も感知できない距離だな。もっと接近してこなければわからん』

「一応、警戒して戦闘態勢は維持しておくか……」

「――動き出しました」


 騎士が言う。ミーシャが周囲の騎士に「警戒を」と指示を出す間に、俺は意識を集中させて索敵で引っ掛かった人物について何かわかることはないかと探る。

 ジャノの力を上手く用いれば、その気配の詳細をつかむことだってできそうだけど……世界を滅ぼせるだけの力なのだ。そのくらいは朝飯前――と思うのだが。


 その時、山中にオオオオ、という魔物の雄叫びのようなものが響いた。俺を含め周辺の騎士達は即座に警戒を強める。ただ肝心の場所は山中に声が響いて判然としない。

 魔物の気配もないため、魔物との距離はまだあるみたいだが……。


「ミーシャ、どうする?」

「索敵によると、人間はこちらへ向かってきているようです。もう少し接近すれば、詳細がわかるかと」


 様子を窺うつもりなのか? 俺は剣を握り直しつつ、人間と魔物の両方に注意を払うべく、どうにか気配を探れないか再度試すことにする。そこで、


『エルク、先ほどの雄叫びを発した魔物との距離はある……なおかつこちらには来ていない。もしかすると、先ほどから観測している人間の方に向かっているのかもしれん』

「組織の人間じゃないのか?」

『あるいは呼び寄せているのかもしれんが……』


 その時、俺はある可能性を思い浮かんだ……が、現時点で確証はない。それを確かめるために動くかどうか……思案していた時、再び魔物の咆哮が山中に響いた。


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