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組織の目的

「ではまず、組織の目的から話しましょうか。といっても、この組織は古く、元々の目的と合致しているのかはわからないけれど」


 エイテルはセリスへ向け、笑みを絶やすことのないまま話し出す。


「現在における組織の目的は、帝国の支配……もちろん、今の皇族に成り代わるといった手段は使えないから、私達が直接支配するのとは違うわね」

「力を用いて強制的に従わせる、といったところですか」


 セリスの言葉にエイテルは頷いた。


「ええ、その通りよ。では帝国を支配して何をしたいかは……もしかすると最初は組織としての目的があったかもしれないけれど、今は完全に個人の願望によって動いている」

「つまり……エイテル、あなたが支配を望むために、行動を起こしていたと」


 セリスは警戒を込めながら言う。


「組織に近づいたのは、自身の目的と合致していたから、というわけですか」

「ええ、その通りよ……ま、先も言ったとおり組織が結成された時の目的はわからない。支配ではなく破壊……帝国を滅ぼすことが目的だった可能性がある。でなければ、こんな力を研究しようとは思わないでしょう」


 言いながらエイテルは魔力を発する。それは間違いなく世界を滅ぼす力……。


「どういう理由があったにしろ、組織に所属しようという意思を持つ人間はほぼ例外なく、この力に魅了された……そして力を得たのであれば、それを使い自らの望みを叶えようとするのは当然でしょう?」


 セリスは何も答えない。ただエイテルをにらんでいる……が、エイテルの方は一切動じず笑みを浮かべている。

 騎士達がエイテル達を囲む中、一分ほど沈黙が発生した後、セリスが口を開いた。


「なぜ、支配をしようと?」

「ただ、全てを手に入れたかった」


 即答だった。エイテルの言葉に対しセリスは眉をひそめる。


「全て……?」

「皇族だから、帝国を統治している……全てを手に入れている。私はそれが憎かった。あなたを見て、全てを持っているにも関わらず、それでいてあらゆる人間を凌駕する才覚を持つあなたが、許せなかった」

「……だからこそ、私の記憶を改ざんしたのですか?」


 セリスが問う。それにエイテルは怪しげに笑った。


「さすがに気付いてしまうか。そうね、打算的な意味合い以外に、純粋な憎悪から行動した面もある。さすがに手を出したら処刑が待っているから、嫌がらせの範疇だけれど」


 エイテルの言葉にセリスは何も語らない。


「あなたが帝国のために魔法を学ぶという理由であれば、いずれ才覚により帝国においてなくてはならない存在になる……それは私の地位を高める道具として使えると思ったから……そんな理由もあったけれど、別に他に方法はいくらでもあった。だからまあ、大きな理由は嫌がらせよ」

「……全てを持っているから憎む、というのは――」

「セリス、あなたには一生理解できない考えでしょう」


 断言だった。そして笑みを湛えながら、その言葉は非常に攻撃的だった。


「それはあなたが満たされているから……あらゆるものを持っているからこその考え。私はあなたに理解してもらわなくてもいいし、同情されるような余地もまったくない。遠慮なく私を憎みなさい」


 言葉と同時、エイテルはまたも力を発した……挑発的な動き。だがセリスはそれに乗らず、代わりに一つ尋ねた。


「あなたは、既に人間を捨てているのですか?」

「そうね。既に私の体は魔物のように変化している。けれど他の構成員とは違う。私は自分の力を完璧に制御できている……暴走するようなことはしないし、むしろ人を捨てたことで寿命も消えた……ゆっくりと、帝国を支配するために動くことができる」

「あなたはここで倒します」


 セリスが決然と言った。一方でエイテルは小さく頷き、


「この戦いは単なる帝国と組織の戦いではない……国を支配するのがどちらなのか、どちらの正義が上回るのか……歴史というのは勝者が作るものでしょう? 私達は今、その歴史を刻むのがどちらかを決めているの」

「……風前の灯火に見えますが」


 セリスが言う。構成員の大半が消え失せた状況では、組織は瓦解したと言っていい。


「あなたがどれほど力を有していても、個人でやれることは高が知れているでしょう」

「どうかしら? あなたがどうやって私と同じ力を有しているのか、推測しかできないけれど……この力を扱っているのなら理解できるはず。世界を滅ぼしうるこれがあれば、私一人でも、全てを支配できる」


 エイテルの気配が次第に濃くなっていく……いよいよ戦いが始まるのか。俺は全身に力を入れながら、セリス達の様子を眺める。


「この決戦を利用し、力を持つ者達を集め全てを取り込んだ……セリス、帝国は想像以上に強かったわ。でも、この私の力は全てを覆す……そろそろそちらも準備が整ったかしら? それでは、世界の行く末を決める戦いを始めましょうか――」


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