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本陣へ

 帝国側の進軍はとても順調であり、なおも爆発音が聞こえる中で組織の陣営を少しずつ制圧していった。

 組織側の拠点には対抗してくる人間や魔物もいるにはいたが、散発的に襲い掛かってくるようなレベルの敵では騎士達の相手をすることは不可能であり――その全てを易々と対処。進撃が止まることはなかった。


 ただその一方で、セリスはさらに警戒を強める。加えて、後方からミーシャによる付与の力を補充した騎士がやってきて、消耗した騎士と交代していく。帝国側としては本陣への奇襲なども警戒しているようで、一切の油断はない。

 そして、なおも爆発音が聞こえ組織側は完全に指揮系統が瓦解している。確実に帝国は組織を追い込んでおり、勝利は目前にさえ思える。


 だが、セリスの表情はなおも固い……ここから、まだ組織側の反撃があると考えている。というより、彼女の脳裏にはラドル公爵の魔人化がよぎっているのだろう。決戦では同等の敵を倒して見せたが、組織も相応の準備をしていることは間違いなく、まだ戦況を覆される可能性が残っていると考えている。

 それは俺も同意であり、気配を消して騎士達にも悟られないように動きつつ、警戒を行う……ただ確実に勝利に近づいているのは確かであり、爆発音が響く度にこちらが有利となっていると考えていい。


 そして、組織側の本陣に接近する中でジャノが言った。


『……仲間割れと考えてよさそうだ』

「わかるのか?」

『これまで戦場で探った時と比べ、明らかに組織側の本陣に存在する力が少なくなっているからな。力の所持者が少なくなっていることは明白だ』

「なら、誰かがその力を奪って……」

『いや、そういう可能性も低いのではないか……?』


 と、ジャノは思わぬ発言をした。


『力を奪っているのなら、明らかに力を得た存在が気配で感じ取れるはずだが……そういうこともないぞ』

「ということは、単に仲間割れをしているだけ?」

『魔力を探った限りではそうだな。ただし、組織本陣に存在する禍々しい気配だけは、一切変化がない』


 それが何を意味するのか……ただ、現状で確実に言えることは、


「このままゆっくりと進軍している間に、組織の戦力は勝手に減っていく……ということか?」

『かもしれんな』

「セリスは警戒しながら少しずつ進んでいるが、それが結果的に功を奏する形なのかもしれないな……場合によってはエイテルが倒れている可能性もある、か?」

『どうだろうな。我としては最終的に生き残るのはそれこそエイテルだと考えているのだが……』


 会話をしつつ俺も気配を探ってみる……その時、さらなる爆発音。それは今までと比べても一際大きく、本陣へと進む騎士達が思わず立ち止まるほどであった。


「……ジャノ、組織側は魔人達が相次いで敗北したことで、仲間割れを始めたということでいいんだよな?」


 ここで俺はジャノへと問い掛けていた。


『状況的に見てそのように考えるが……何か気になることがあるのか?』

「いや、さすがにあり得ないと思うんだが……もし仮に、ここまで組織が行った動きが全て計画通りだとしたら、次は何が来ると思う?」

『さすがにこれらが全て計画とは考えにくいが……もしそうであったなら、魔人を含め善戦全てが捨て駒ということになる。いかに本陣の者達が帝国を圧倒できると考えているにしても、わざわざ戦力を削る意味はないだろう?』

「だと思うんだが……いや、帝国とエイテルは独断で取引を行った。もしエイテル自身が組織が破滅してもいいから力を求めていたとしたら……」

『誰かが力を奪っているかどうかわからないが、もし爆発がエイテルの仕業だとすれば、という話か』

「ああ……考えすぎのような気もするが……」

『組織を潰してまで、何かをしようとする……わざわざ決戦の舞台でやることではないが、この場に幹部が結集するのであれば、色々やる好機ではあるか』


 ジャノとしても否定はしなかった……というより、俺の言及に対し何事か考え始める。


『組織を掌握するため、としては現状不利になっていることからもやはり無茶な手法ではあるな。とはいえ、戦況が有利になろうが不利になろうが計画を実行する予定だったのであれば、やるしかないと動いたのかもしれん』

「ジャノ、どう思う?」

『決してあり得ない話ではないような気もするが……』


 ジャノは言葉を濁しながら応じる。そうした中、いよいよセリス達は本陣近くへと足を踏み入れる。

 直にエイテルがどうなっているのかを確認できる……俺は一度深呼吸をした。仲間割れをしているのであれば、本陣に辿り着いても戦闘が起きない可能性だってある。だが、異様な事態であることは間違いなく、ここからどう話が転んでもおかしくないような気がする。


「ジャノ、何か異変があればすぐに報告を頼む」

『ああ、わかっている……エルク、もし皇女達が危機的状況に陥ったら――』

「一も二もなく助けに入る。ジャノ、いつでも俺が全力で……全ての技術を使って戦えるよう準備を」

『いいだろう』


 返答をした直後、とうとう騎士達が組織本陣へと辿り着いた。


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