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奇襲の成功

 そして――組織が具体的な対策を行うより先に、俺は気配を感じ取った魔人を全て打倒することに成功した。変化していく魔人に狙いを定めひたすら斬っていくことで、結局戦闘にならないまま、撃破できた。

 これは完全に組織側が後手に回った形だろう……俺の奇襲は完全に成功したと考えていい。


 中にはあえて魔人を隠すようなこともしていたのだが、俺はそれを見つけ出すことができ、実質無抵抗なまま倒すことができた……結果として組織が後詰めとして用意していた魔人は全滅。戦局は大きく帝国側に傾いた。


 そして、前線で激突している両者だが……帝国による攻勢によって魔人は一気に数を減らしていた。ジャノの言う通り、帝国はある程度加減しつつ戦っており、組織は帝国の力を見誤っていたということになる……いや、もしかすると帝国側としてもミーシャの力を利用した実戦が初めてだったので、最初はある程度力を調整していた可能性もある。だとしたらこの点においても組織はミスをしたということになる――


『このまま一気に攻勢を強めれば、完全勝利もあり得るな』


 ジャノが言う……現在は組織の陣地内に発生した魔物を斬って回っている。ひとまず魔物を生成する人間を倒し、そこから魔物の数を減らしている次第だ。


『思った以上に組織本陣の動きが重い……魔人のこともあるが、やはり組織の幹部達は戦闘……ひいては、戦争経験がないのかもしれん』

「まずは帝国側の能力を確認し、圧倒的な力の差で押し潰す……単純だが組織側としては戦力に絶対的に自信があった。俺もこの戦術自体は間違ってはいないと思っていたが……」

『実際のところは、帝国も相当入念な準備を行っていた。かなりの数、魔人が一斉に襲い掛かっても対応することができる……魔人は実質魔物と同じように力で押し込む形をとっているようだが、それを見事にいなしている』

「……組織側における幹部がどういう存在なのか、帝国側はエイテルからの情報によりある程度わかっていた。その上で、おそらく戦争経験が少ないと判断し、集団戦で対抗しようとした」

『ミーシャ王女が持つ力についても、単純にただ付与するだけではなく応用していたことからも、騎士達が個々で魔人に対抗するつもりはなかった、という話だろう。組織側の思惑を帝国は見事出し抜いたわけだが……かといって、油断していれば足下をすくわれるのは間違いない』


 ジャノの言葉に俺は首肯し、


「そもそも、ミーシャが付与した力……魔人との激突でどれほど残るのか」

『うむ、そこについても気になるが……組織本陣の面々がこうも簡単にいくとは思えない』


 ――魔人が全滅した状況だが、まだ組織本陣に動きはない。ただ、俺はまだ気配を断ち動き回っているため、まずは後詰めの魔人を倒したのが誰か、という確認作業を行っているのかもしれない。


「ジャノ、めぼしい敵は倒したがどうする? このまま陣地内を食い荒らすか?」

『それも一つだが、このまま戦い続け本陣に近づけば、エルクのことは勘づかれるだろう。現時点でまだ我らのことはわかっていない様子……露見するよりまだ隠していた方が、組織としてはやりづらいかもしれんな』

「……なら、一度戻るか」

『うむ、帝国側の様子を窺いつつ、少し隠れるとしようか。残っている魔物も帝国の騎士達なら対応もできるため、問題にはならないだろう』


 結論が出て、俺は元来た道を引き返す。先ほどまで隠れていた岩陰まで戻ってもいいが、帝国側が陣地の様子を見て攻めるのであれば、援護するには遠くなる。

 よって俺は、帝国側が放つ魔法が魔人を消し飛ばしている光景を目にしつつ、前線に程近い場所にある岩陰に隠れることにした。


「平原とはいえ、遮蔽物が多いのは助かったな……」

『組織側は陣地内での攻撃が止んだと認識することだろう……魔人が消え失せたのであれば、さすがに組織の本陣から人員が出てもおかしくはないが』


 ジャノが解説する間に、帝国側がとうとう前線にいた魔人を倒すことに成功した……どうやら被害もゼロ。怪我人くらいはいるみたいだが、圧倒的な勝利と言って間違いない。

 この状況は俺も予想外ではあったが……それだけ、組織は自分達の力を過信していた、という話なのかもしれない。


「……どうやら、俺達が思っている以上に組織はやらかしているみたいだな」

『組織本陣の状況がわからない以上、まだまだ予断を許さないが……勝利に近づいていることは間違いないな』


 このまま一気に戦いを進めたいところだが……帝国はさすがに突撃はしない。組織の陣営にいる魔物などを警戒しつつ、少しずつ歩を進め始める。

 俺はその様子を見つつ、組織の本陣へ目を向ける。禍々しい雰囲気は相変わらずなのだが、その変化のなさは奇妙に思える。


「エイテルを含め、組織幹部が混乱してくれればいいんだが……」

『……さて、どうだろうな』


 俺とジャノは会話をしつつ……その間に、とうとう帝国の騎士達が組織の陣地へ足を踏み入れた。


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