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人を殺してみたかった

 老婆の死体が発見されたのは十二月の事だった。

 元より身よりも近所付き合いも無い老婆に気をとめる者はおらず、不審に思った役場の人間が老婆を訪ね始めて発覚したのだ。

 死体は既に白骨化しており、死因も調べられる状況ではなく、心不全の孤独死とされた。

 その事に対し彼女は冷静だった。

 あれはいくらなんでも衝動的過ぎた。

 身近な所で遣るべきではなかった。

 ちゃんと計画と記録を取るべきだった。

 次はもっとちゃんと遣ろう。

 彼女に一切の後悔はなかった。。

 しかし、意外な事に彼女はその後しばらく、殺人どころか小動物の殺害すらしなかった。

 すぐに就職活動が待っていたのもあるだろうが、彼女の中で何かあったのだ。

 だが、彼女が知りたかった事が解決したわけではなかった。

 彼女は地元の老小さな養豚場に就職し、一年を経て中古のバンを購入すると行動を開始した。

 毎週末変装と言っていい程普段着る服とはかけ離れた男性者の服に着替えると、少し離れた地方都市に出かけ獲物を探し街中を徘徊した。

 当初彼女はターゲットとしたのは歳の近い女性だった。

 それも何処かだらしなく、ボロボロの靴や鞄を身に付けたり、特徴的な小物を持っている女性だった。

 そんな見るからに何か問題を抱えていたり、家出をした女性を彼女は求め彷徨った。

 彼女は慎重に条件に合いそうな女性を見つけると親しげに話しかけ、言葉巧みに彼女達の警戒心を解いた。

 彼女達の話題に共感を示し、悩みを話させ、同情し、優しい言葉をかけた。

 そして、彼女達の口から「行く所がない」「泊めて欲しい?」という言葉を引き出すと彼女は喜んで自らの家に誘った。

 彼女は殺害した老婆の家に似た僻地にぽつんと建つ古く小さな家を借りていた。

 そこは一度入った獲物は絶対に逃がさない、蜘蛛の巣の如き地獄。

 彼女はまず連れ込んだ被害者に食事や飲み物に薬を盛って振舞った。

 そして、倒れた被害者を暴れられないよう厳重に縛り、口を塞ぐと風呂場まで運び彼女達が目覚めるまで待ってゆっくりと楽しんだ。

 ある時は切り刻んだ。

 ある時は刺した。

 ある時は炙った。

 ある時は首を絞め。

 ある時は殴り。

 ある時は水に沈めた。

 ある時は餓えさせ。

 ある時はそれら全てを試した。

 どれだけ殺さないでいられるか試した事もあった。

 死体は全て細かく切断し、日を分けて職場の豚の餌に混ぜた食べさせた。

 彼女自身がその肉片を調理し食べた事もままあった。

 荷物は現金──気に入った被害者からは記念品も──を奪い、それ以外の電子機器や貴金属、衣服等は被害者とであった都市近くの川や海に捨てた。

 そうして何度も何度も犯行を重ねるに連れ、いつしかターゲットは若い女性だけではなくなった。

 迷子になっていた幼い子供や獲物を物色中に声をかけてきた若い男性、痴呆症で徘徊していた老人だった事もあった。

 ある嵐の晩、濁流となった川を覗き込んでいた老人を背中から突き落とした事もあったが、それは一度だけだった。

 被害者の死に顔が見れなかったからだ。

 そんな彼女の犯行の終わりはあっさりとしたものだった。

 通勤中に事故に遭い、気を失った彼女の車から彼女以外の身体の一部が見つかったからだ。

 すぐさま彼女の自宅は調べられ、業務用冷凍庫から幾つにも小分けされた死体が見つかり御用となった。

 証拠を突きつけられた彼女は、少しだけ考えると一度ため息を付き犯行を認めた。

 女性による猟奇殺人というこの事件は世間を揺るがせ、マスメディアは彼女の過去や好物まで調べ上げ面白おかしく報道を繰り返した。

 中でも最も視聴者に衝撃を与えたのは彼女の動機だった。

「」



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