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第2話

   

 夏は終わり秋も深くなって、夕方の六時にはすっかり日が沈んでいる。そんな季節だったので、会社からの帰り道、最寄駅の改札を出る頃には、既に空は暗くなっていた。

 駅前の大通りをしばらく歩いてから、信号のない交差点で曲がって、住宅街へと続く小道に入る。そこから先は裏道なので、街灯も若干(まば)らになる。

 とはいえ、夜空には月が浮かび、星も(またた)いていた。十分に明るいし、むしろ人工的な(あか)りが減った分、自然の(あか)りが目立つようにもなる。月と星の光を浴びて夜道を歩くのも、なかなか乙なものではないか。


 平凡な日常の帰路の中で、そんな小さな風流を感じた私は、ふと足を止めて、夜空を見上げていた。

 (うっす)らと雲はかかっているものの、星と重なってもその光を妨げない程度だ。しかも月の浮かぶ辺りには一切の雲がなく、まるで「今夜の主役は月だから、近づくだけでも恐れ多い」と言っているかのようだった。


 私の真上に浮かんでいたのは、まさに「真ん丸」という言葉が相応しい完全な円形。そんな美しい月を目にするうちに、私の口から漏れたのは、感嘆の声だった。

「そうか、今夜は満月か……」

 そういえば昼休み、会社の給湯室で、若い女性社員たちが月見団子の話をしていた。彼女たちは今頃、家族や友人たちと一緒に、お月見の真っ最中(さいちゅう)かもしれない。

 そんなことを考えていると……。

 後ろから声をかけられた。

「なるほど。あなたにも、あの満月が見えるのですね?」

   

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