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クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
この道や行く人なしに秋の暮れ

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あたしがブチかましてやりましょうか?

とすすめる郁子に「まあ、なんという娘さんだ。あなたがおひとつでも食べたのかな?もっともあれだけいただいておきながら聞けた義理ではないが」と云って、心からのように郁子に合掌し「もう充分いただきました。僧供養の功徳のほどははかり知れません。のちの倍返し、何倍返しは必定。南無観世音菩薩ご照覧、このスジャータ姫にのちのお導きを…色即是空・空即是色・受想行識亦復如是じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ」とお布施への経文を返すのだった。それにこちらも合掌して「ありがとうございますう」と郁子が一礼したのもご愛嬌である。

一方‘向こう陣営’では先ほどらい梅子に負けぬほどイラつき気味だった恵美が小声で‘大将’梅子になにごとかご注進しているようだ。「ちぇっ、梅子さん、いつまであの坊主に云わせておくんです?色即是空だの、じゅ、じゅそうぎょうブニャブニャだの、抹香くさくて反吐が出そうですよ。もう…いきなりここで、あたしがブチかましてやりましょうか?もし張り合うんだったら何事も先手必勝ですよ。このままでは部長や鳥羽のジジイ、それに坊主と、あいつらまとまってしまいますよ。まさか、梅子さん…怖いんじゃないでしょうね?」と大将に戦いの先駆けをすすめる。蓋しもっともなご注進だとおもわれる。ことの正邪、善悪がいずれにあるかは問わず、単に勝敗を競うのであれば、向こう陣営が固まらないうちに‘やってしまう’のがベストであろう。2人の間で加代はまだ何を云うべきか決めかねているようだ。とにかく、さにかく、大将梅子のご意向がすべての加代だった。

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