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クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
吉野の桜
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強引な亜希子

もし人に通世の願いなどというものがあるならばまさしくそれを今に保っているような感があった。人の美しさは造型だけでは決して測れない。心即如是相となるのであり、その心、志が三世を貫くような求道的なものであるならば、蓋しその美しさも桁外れとなる道理である。もっとも確かに造型だけでもこちらも桁外れの美人なのは間違いない。とにかくその美女亜希子が「はい。お参りに。私たち大学の歌道部なんです。歌聖西行の庵をぜひ詣でたくて、こうして東京からはるばるとやって来ました」と云うのに「いえ、お参りではなくて単なる見学です」と口をはさむ娘がいた。梅子だった。戸惑う風を見せながら老人が「いや、ま、それはどうでも」と苦笑し、さらに「ほー、しかし短歌、和歌ですか。へえー、お若いのに感心ですなあ。もしよろしかったら向こうで歌合わせでもさせていただきたいもので。もし、お嫌でなかったらですが。ははは」と唐突なことを口にする。「まあ、それはそれは。嫌などと、とんでもない。こちらこそ是非お願いします。御指導いただければ来た甲斐があります」「いやいや、指導なんてとんでもない。単なる下手の横好きですがな。ははは」などと亜希子と老人が勝手に話を進めるのを梅子一派がいまいましげに聞いている。亜希子には自分の云うことが部の決定事項とでもするような強引なところがあって、どうかするとほぼ同年齢であるにもかかわらず自分の子供8人を引率するような感すらも時に見せるのである。

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