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クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
吉野の桜
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亜希子の美貌

ややあって「あの、西行庵まで行かれるんですか?」と亜希子に声をかけられると待ってましたとばかり向きなおって「へえ。ちょっとお参りに。あいにくの天気ですけど、なんかこう、急にお参りしたくなりましてな。虫の知らせっちゅうか、ありましたんですけど、いま判りました。こないな別嬪のお嬢様方がようけ来られてるんやったら、虫の知らせとなったわけや」と答えれば「いやだ」「おじょうず」などと面々が黄色い声をあげる。首尾よく受けたせいか顔を赤らめながら老人が「いや、ほんまですよ。ところでいま何となく伺とったら耳に入ったんですけど、お嬢様方もやはり西行庵に行かれるんですか?」と亜希子に聞くのだがそのたずねる表情がいかにもまぶしげだ。ひょっとして年甲斐もなく赤面したのはこちらのせいかも知れない。すなわち亜希子。他の8人の娘らもそれなりに各々見られもするのだが、この亜希子はまったく別格だった。月並みに云えばハッと目覚めるような美しさとでも云うのだろうが、その若いのにもかかわらず面貌にどこか古風な面影があった。古代の日本の、例えば平安時代の姫君を感じさせるような、何とも云えぬ気品があったのである。また別の見方、云い方をすればこうも云えただろうか。彼女の面相には過去世と現世をつらぬくような生き通しの意志がそこに現れている…とでも。

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