私の名は東尋、東尋僧侶
「じゃあ私が代りに答えてやるわ」というその顔が、なぜかいささかなりともまなじりを決している。僧と同様なるこのあとの長口舌が感じられたが、しかしそれは不穏なる空気を呼ぶようにも感じられた。遠くでかすかに雷鳴がとどろいた。こちらに来なければいいが…。
「いちいち理由を明示して、これからあなたと亜希子を論破するつもりだけど、いい?ただその前にちょっとひと言だけね…」とわざわざ間を置いて梅子はもったいをつける。何やら僧について感じるところがありそうだ。
「あなたさあ、さっきからジキルとハイドと云うか、二重人格と云うか…突然別人染みちゃったりしてるのよね。僧形をしているんだから僧号があるんでしょ?まずそれを聞かせてくれる?もしないんだったら俗名でもいいから教えてよ。お世辞を云うわけじゃ更々ないけど、とにかく私、あなたに興味があるわ」と問う。すると僧は心中で何者かに素早く可否を問うたがごとくしてから「はい。拙僧はこちらの社、いや会長が見抜かれた通り僧籍のない身ですから、どこのナニ坊とも号してはおりません。本名を云うなら東尋、東を尋ねると書いて東尋と申します。東尋坊主、すなわち東尋坊と呼んでくれてもいいですが、しかしそれでは何やら不吉な響きがしないでもないので、どうぞこのまま坊主とだけお呼びください」と自らを名乗りさらにひと言「私ごときに興味を抱いてくださり、恐悦に絶えません、梅子さん。さては男としての魅力が私にもまだあったか…」




