美しい裸身を神仏に供養する
‘こんな男’相手に沽券にかかわるし、いまさらの年不相応な色恋沙汰も同じく沽券にかかわるからだが、それでいながら亜希子への思いが増すのも否定できないでいた。経営者のと云うべきか、宿世のと云うべきか、覇を(この場合は亜希子を)争う業がむらむらと湧き起こっていたのである。それを知ってか知らずか僧は「話がひどく変わるようだがここで彼の越南国、いまで云うベトナムにおける寓話をひとつご披露したい。彼の国においては人里離れた森の中、泉のほとり、そこに坐します神仏の祠の前で、妙齢なる御婦人方が、一糸まとわぬストリップ姿となり、沐浴をすると云う…」「いやだ」匡子と慶子が声をそろえて失笑し「すごいですう」と郁子が真面目顔で云う。「いやいや、あなたがたが神仏にお供え物をして供養をするように、ベトナムでは御婦人方がその美しい裸身を見せることによって神仏を供養するのです。これ、事実です。蓋し、神仏にとっては目の保養ですな」などと聞けばついに娘たちが手を叩いて笑い出した(ただ恵美はむっつり、梅子は口を半開きにして呆れ、笑わないでいたが)。一方鳥羽は険しい目付きとなってそろそろ頃合いを見はからい始めたようだ。これに気づかず僧が(僧形もかえりみずに)自分の身体を撫でまわして見せながら「…他方御婦人方にとってもエクスタシー、身体をこのように撫でまわし、あたかも一人セックスの恍惚状態に堕ちて行くのだそうです…」とここまでやると、娘たちには大笑いで受けたが、しかしついに鳥羽が「ちょっとあんた、いい加減にしいや。若い娘さんたちの前ですることか。なんでそない話になるんや…?




