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クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
吉野の桜
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「あ、い、う、え、お、か、き、く、け」の順で命名した6人の娘たち

「吉野、吉野」。登って来た吉野山ロープウエイのゴンドラの到着に合わせて構内アナウンスが流れる。山頂は昨夜来の季節はずれの寒気のせいで薄ら寒く、小雪さえ舞っていた。桜のメッカとは云え訪れるにはいささか時期尚早であり、またこの天気とあってさすがに人の出足はまばらだった。然るに到着したゴンドラからはリュックを背負った娘ばかり9人が出て来、駅前の観光案内版に移動しながらてんでに赤い気炎を上げ始める。

「さあ、着いたぞ!吉野、吉野。東京からはるばるとやって来たぞ!」とまずはリーダーの亜希子が雄叫び(?)をあげる。「うわっ、ここが音に聞く桜のメッカ、吉野ですねえ。感激いっー!」と取り巻きの郁子が合わせる。他の面々もキャーとか、ワーとかそれぞれ気勢を上げるのだが3人ばかり逆らう者がいた。「何がキャー、感激い―っよ。寒くってしょうがない。雪が舞ってるじゃない。桜もまったく咲いてないし、こんな時に来た私たちって、まるっきりバカじゃん」とサブリーダーの梅子が云うと、その取り巻きの加代が「そうよ、そうよ」とさっそく応じ、いまひとり恵美という、名とはかけ離れた男まさりの豪気な娘が「ホントすっよね。リーダーは機転が効かないって云うか。中止にすればよかったんですよ。梅子さんがそう進言したのに」と聞こえよがしに大声で、且つあけすけに云う。しかし「まー、あんなこと云ってますよ、リーダー」とこちらは慶子とお嬢様コンビを組む匡子くにこがおもねるように亜希子に云い、その相方の慶子が「そうよ。シーズン中の吉野なんて桜じゃなく人波を見に行くようなもんだから、ずらして行こうって、みんなで決めたくせに」とそれに合わせた。残った2人の織枝と絹子は皆の顔を見るばかり、いたっておとなしい性格と知れる。

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