表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
クワンティエンの伝説

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/80

われ、いつの世も一番弟子たらん!

「あの、お言葉ですが、その…生ける観音像だの小野小町だの、過分な賞賛はどうか止してください」とひとこと釘を刺したあとでしかし続けて、「私、そんなことを聞きたくて呼び止めたのではありません。あの、その、フフフ、私…あなたにどこかでお目にかかったような気がして…お懐かしいような…胸がいっぱいになって…。どうか、私の気持ちを受け止めてください」とあふれる胸のうちを開陳してはばからない。ふだん決して取り乱さず、皆の前では常に母親然としている部長のこの姿に、織江と絹子を始め部員全員が気を飲まれざるを得なかった。だいたい部長は自分の云っていることがさきほどの鳥羽同様、何の脈路もない、世迷ごとの類であることに気づいているのか。突然なぜそんなことを云うのだろうとばかり、8人は(正確には6人であるが…)まるで自分たち子供の前で母親が、節操もなく男に言い寄っているような心持ちにもなってしまうのだった。しかし亜希子における実際のところはそれとはかなり違っていた。なぜか、千里の隔たりを経てやっと巡り会えた師に、必死にすがるがごとき思いに陥っていたのである。誰か熱い胸のうちを、込み上げて来るものを押しとどめられるだろうか。『…いつの世も一番弟子たらん…』という誰かの声が亜希子の胸のうちに響き渡っていた。

それへ、鷹揚にうなづいて見せて、僧が亜希子の思いをしっかりと受け止めたようだ。しかしここでもし腕など差し伸べようものなら、亜希子はきっと感涙にむせびながら僧の胸に飛び込んで行くのに違いない。宿世の願いが、業への対決が、そのように軽々しく現れ、為されるものだろうか。為されていいものだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ