われ、いつの世も一番弟子たらん!
「あの、お言葉ですが、その…生ける観音像だの小野小町だの、過分な賞賛はどうか止してください」とひとこと釘を刺したあとでしかし続けて、「私、そんなことを聞きたくて呼び止めたのではありません。あの、その、フフフ、私…あなたにどこかでお目にかかったような気がして…お懐かしいような…胸がいっぱいになって…。どうか、私の気持ちを受け止めてください」とあふれる胸のうちを開陳してはばからない。ふだん決して取り乱さず、皆の前では常に母親然としている部長のこの姿に、織江と絹子を始め部員全員が気を飲まれざるを得なかった。だいたい部長は自分の云っていることがさきほどの鳥羽同様、何の脈路もない、世迷ごとの類であることに気づいているのか。突然なぜそんなことを云うのだろうとばかり、8人は(正確には6人であるが…)まるで自分たち子供の前で母親が、節操もなく男に言い寄っているような心持ちにもなってしまうのだった。しかし亜希子における実際のところはそれとはかなり違っていた。なぜか、千里の隔たりを経てやっと巡り会えた師に、必死にすがるがごとき思いに陥っていたのである。誰か熱い胸のうちを、込み上げて来るものを押しとどめられるだろうか。『…いつの世も一番弟子たらん…』という誰かの声が亜希子の胸のうちに響き渡っていた。
それへ、鷹揚にうなづいて見せて、僧が亜希子の思いをしっかりと受け止めたようだ。しかしここでもし腕など差し伸べようものなら、亜希子はきっと感涙にむせびながら僧の胸に飛び込んで行くのに違いない。宿世の願いが、業への対決が、そのように軽々しく現れ、為されるものだろうか。為されていいものだろうか。




