梅子の気質
ちょうど大学は出たけれど…とする超就職難の時期にも重なっていたのだが、そこに於いて将来の仕官や就職、あるいは起業を夢見る学生たちを、かつての義清や清盛ら野心満々の若者たちと見做すこともできるわけだった。しかし梅子の場合は彼らとは些か違っていた。野心がないわけではないがそれよりも、筋の通らぬことへの反感がなにしろ強かった。能力のある者、況やそれを実証させて見せた者への認証と待遇はあってしかるべきだ思われてならなかったのである。それから高じて言行不一致の人間にも我慢がならなかった。合理的学業指針と不合理極まりない歌人会の指針はいったい何なのか。おかしいではないかと心中で常々白河を責めていたのである。とにかくこの白河征司、のちにこの物語の後編にご登場願うとしよう…。
話を戻すが斯様な経緯での梅子の恥ずかしさと無念さを悟った加代が、その梅子の手を握って無言のままになぐさめる。恵美はいっそ鳥羽をぶっとばしてやろうかと手をこぶしにしてふるわせるがさすがに実行までははばかられた。まったくとばかり亜希子は鳥羽と梅子一派を見遣るがもとより心入れは身内の梅子ら3人にあるのだった、たとえ普段からどれだけ反抗の煩わしさを受けていたとしてもである。間違っても新歌人協会への梅子の思い入れを鳥羽に口にするつもりなどなかった。一方鳥羽に対してはいささか大人げないと思うが、しかし本人が云うように意を決して端から心を開いてくれたぶん、それを拒否された時の怒りが相当強かったのだろうとも思われた。




