じゃ、恵美、あなたが始めね
「なんか不思議。お話をうかがっているうちに私もそんな御縁を感じました」と匡子が云い「ねえ、ほんとに。私もそう。ほほほ」と相方の慶子が受ける。「おとうさま、という気がします。たしかに」とまじめ顔で云う郁子も、またなぜか必要以上に恥ずかしがり、顔を上気させている(柄にもなく、である。ふだん決して取り乱さず、自分を失うことのない娘だった)亜希子も、さらには無言のままでいる織江と絹子も含めて皆一様に話に打たれている観があった。前述したが‘逆縁の’梅子でさえもそうである。転生をまたぐ、合縁奇縁の気がみなぎろうとする感すらあるのだが、しかし2人ばかりまったくそんなことに不感症の者がいてその内のひとり恵美が「匡子と慶子じゃないけど、まさに‘お上手ですわ’、ですよ。関西の‘年寄り’は、年を取ってもなかなかやるもんですなあ」などと、若い娘の気を引く話をしやがってとばかり、男のようなしゃべりかたでぬけぬけと云ってみせ、その場をぶちこわしてみせる。加代は加代で「梅子さん、いいんですか?あんなこと云わせといて」と小声で主梅子に尋ねたりもする。その様子を見ながら舌打ちする思いで亜希子が「じゃ、恵美、あなたが鳥羽さんとの最初の歌合わせをしてね。関東の‘男らしい’ところを見せてあげなさいよ。鳥羽さん、お手柔らかに、どうかよろしくお願いします」と恵美を責めながらもなお気遣いつつ、歌合わせの端を鳥羽に頼み込んだ。




