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悲鳴をあげる鳥羽老人
「いやー、もう堪忍堪忍。これ以上食べたら死んでしまいますがな」すっかりくちくなった風情で鳥羽が云うのに「そう云わずにフライドチキンもおひとつどうぞ」と好意からか悪意からか恵美がなおも勧める。「やめて。もうやめて」と女言葉でそれに悲鳴をあげてみせる。さんざん逆らったが今度も亜希子に強引に押し切られて、あずま屋へと移動していた梅子が憮然とした表情でそれを見詰めている。「いやあ、まったく。けっこうなサンドイッチやらお重箱の料理やら、御馳走になってもうて、ほんまにもうすっかり堪能しましたさかい、これ以上は勧めんどいてください。‘老い身には、いかにかなお食すべき’、ですわ。ハハハ」。それとなく古語など使って和歌の素養をかいま見せる鳥羽。持参した携帯ポットのお茶で食べ物を飲み下してひと息ついたあと、老人らしからぬ、ましてその知的で策士然とした風貌からも、ふだんは決してすまいと思われる突拍子もない話をいきなり開陳し始めた。しかしそれを聞くうちに一同はもちろんのこと梅子でさえも耳をそばだたせ始めるのだった。




