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クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
吉野の桜
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あやかし

 両の手が身体を這いまわる、この身を確かめるかのように。そこかしこを這いずりまわる。なんという美しい娘…この私。なんという美の造型…私の身体。乳房をもたげ、横腹をさすり、内股を、腰を撫で、究極の官能の場所へとたどりつく…。すると、手がいつしか何者かに変わり、娘に代ってそこを愛撫し始める。ハッとばかり娘は目が覚めて、必死になってその何者かを退けようとするが、しかしそのあやかしは、まさしくそこにこそ執着し、触覚の極限の悦びを娘に与え続けて止まない。逆らえぬ、力強い両の手があやかしに生えて、娘の両脚をひろげ、そしてついにあやかしは己の本性本体を現しつつ、中へと…


 こんどこそ本当に目が覚めた。レースのカーテンから差し込む朝のひかりをまぶしげに見つめる。やるせなげにため息をついてまだ火照りが残る身体をなでまわすが、しかし次の瞬間いまいましげに舌打ちして自分の両の手を交互に払いのけた。常々なさけないこと、いまいましいこととみずからに禁じていた自慰のしぐさが、ここに来てなぜか夢中とは云え止められなくなってきたのだ。まるで何かの予兆のように、拒んでも拒んでも毎夜この身体に来たっては全身をもてあそぶ。これと同じことがちょうど今から3年前にも起こったのだが、今の世の少なからぬ女性たちが為すという、処女マリアへ贖いを為すことで、また(ある)道に精進することでようやくその悪癖を払い退けたばかりだった。

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