料理の鉄人、梅子と郁子
「まあ、本当。すごいわね。食べるのがもったいないくらい。写真に撮っておいたら?」「もう撮りました」織江が小さい声で答える。こしらえたところで家で撮っておいたようだ。「これはたぶん、醤油に浸したカツオ節で色をつけたお握りに、白いご飯のお握りをのせてパンダをこさえたんですよ。目鼻立ちは海苔かな。わあ、マヨネーズで瞳まで入れたりして、超可愛いーっ!待っててね、織ちゃんと絹ちゃん、まだ食べないで。後学の為に写真撮っとくから…」そう云って携帯カメラを取りに行く郁子。匡子と慶子にも見に行くようにとけしかける。織枝と絹子はなかなか箸をつけられそうもないが、普段注目されることがない分嬉しそうにしていた。
その様子をあずま屋からちょっと離れた所で眺めながら梅子グループが弁当を使っている。来る途中で買って来たフライドチキンに豪快にかぶりつきながら「梅子さん、弁当食べないんですか」と恵美が訊く。「あいつ(郁子)に見られたくないんだよ。うるさいったらありゃしない」「ほんとっすよね。花より弁当ですよ、見てたってしょうがないじゃん」。しかし加代が「でも梅子さん、料理は郁子といい勝負じゃないですか。むしろ見せつけてやればいいのに?」と不思議がって云う。普段から梅子の家に恵美とともに訪うかして梅子の料理好きとその腕のよさを知っていたのだった。郁子についてはこさえた手料理を時々部活に持ち込んでは皆に食べさせるのでその腕のほどを熟知していたのである。




