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クワンティエンの夢  作者: 多谷昇太
吉野の桜

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思わずブッ飛ばしてやろうかと…

 窓から手をふりながら走り去って行くセダンを見送りながら梅子が「冗談じゃない。嫌だからね、あたしは」とさっそく亜希子にごねた。亜希子の代わりに郁子が「どうしてですか?よさそうなお爺さんではないですか。その時間ならちょうどお昼御飯でしょうから、私がこさえて来たランチを御馳走してあげますよ。梅子さんは安心して自分のお弁当を食べれるから心配しないでください」と云うのに「誰が昼御飯のことなんか云ってる!あたしはあの爺さんと同席するのが嫌だと云っているのよ」と気炎をあげる。なぜなのか、初対面なのにも拘らず本当に虫唾が走るほど嫌なようだ。それを察した恵美が「あの爺!」とまずぶちあげさらに「あの爺、絶対エロ爺だからね。リーダーを見詰める目付きのいやらしいったら、なんの。思わずブッ飛ばしてやろうかと思った」などと梅子への追従に止まらない悪態を吐く。「まー、あんなこと…」匡子が絶句し「お下品なこと云わないの。歌道部よ、私たち。あんた空手部に入るのを間違えたんじゃないの?」相方の慶子が諌めるがそれに「空手部なんか、(学校には)ねえ!」とまことに男らしい恵美であった。しかし慶子は「あら、そうですか。でもね、もう部長が決めてしまったことだし、いまさらお断りもできないでしょ?それに私の勘だけどさ、あの方相当の歌を詠むわよ。部長が云った通り、いい勉強になるんじゃない?」と怯まず、匡子も「そうよ。恵美さん、あなた歌合わせするのが怖いんでしょ」「なにをー!?」「キャー、部長、亜希子さん、助けて」などと喧しい。

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