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魔術学園  作者: 直井郷
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プロローグ

 ウィルウッド王国では、すべての人が魔力を持って生まれる。今のところ、なぜ人々が魔力を持って生まれてくるのか、その理由は一般には明らかにはなっていない。

 また、事実上、すべての人が魔力を持っているわけだが、すべての人がいわゆる“魔術師”と言えるのかというと、そういうわけではない。


 王国における魔術には、基礎魔術と固有魔術の大きく分けて2種類があり、それが関係している。


 “基礎魔術”は、すべての人が共通して扱うことができる魔術である。魔力を飛ばして物を壊す、魔力で身体を保護する、簡単な結界を張るといった極めて基礎的なもののことをいう。

 一方、“固有魔術”は、その人だけに備わる独自の魔術のことを指す。そして、固有魔術を会得している者こそが、“魔術師”および“ギフテッド”と呼ばれる。ただ、こうした固有魔術が発現し、会得できる者は一部に限られている。まさしく選ばれし者と言うに値する人々だった。



___________

 

 時は、WW(ウィルウッド歴)341年。クレインピーク学園にて______________

 

 

 講堂には、百余名の制服に身を包んだ少年・少女が集まっていた。皆オレと同じく、このクレインピーク学園の試験を突破し、入学が決まった者たちだ。これだけの人数が集まっていながら、誰も声を発することなく、異常な程の静けさだった。集められた講堂は、高い天井と開放的な造りから、これだけの人数がいても狭さを全く感じさせない。そして、正面に見える祭壇の後方には、巨大なステンドグラスがはめ込まれていて、そこから外の光が差し込み、堂内を照らしていた。派手さこそないものの、そこには何か荘厳な感じがあった。


 ここクレインピーク学園は、ウィルウッド王国が、王国を担う魔術師を育成するための機関として設立した学園である。16歳以上かつギフテッドであれば、生まれや身分に関係なく入学資格が与えられており、入学試験に合格した者は、学費など払うことなく学ぶことができる。ただ、これほどまでに開かれた学園ではあるが、王国が何故そこまでして人材育成に力を入れているのかについては明言されていない。

 そして、学園の門が開かれているとはいえ、3年制である学園を卒業することができるのは、決して多くはなく、成績不振などで脱落するものが少なくない。だが、卒業した者は、王国の中枢に仕えることができるというエリートコースが用意されている。そのため純粋に魔術師として大成したいというだけでなく、出世を望む生徒も少なくなかった。




 やがて壇上に人が上がるのが見えた。一気に緊張感というべきか威圧感のようなものがはしる。すごい貫禄だ。



「恐らく、学園長ですね」

 隣にいるエーデルが小声で呟く。


 学園長に違わぬオーラが感じられる。それもそのはずだ。学園長の名は、ペラルフェ・マーセナス。オレもその名は聞いたことがある。王国の治安維持を担った名高い魔術師だ。その手腕を見込まれて、魔術師の育成を監督する役目を任されたということらしい。


 ただ、姿を見るのは初めてだった。学園長にまで登り詰めるような人はある程度歳を重ねているようなイメージがあったが、実際に見ると、かなり若い印象を受けた。




 そのペラルフェは、壇上からゆっくりと時間をかけて生徒を見渡した。


 やがて正面に向き直ると、話し始めた。



「…まずは君たちの入学を歓迎したい。私が君たちに望むのは、1人でも多くがこの学園を卒業し、王国を支える人材へとして大成することだ。まぁ学園側とすれば、王国及び国民を護る存在になりたいと思っている生徒を求めていると言った方がいいかもしれない。ただ、私はそもそもここにいる全員がそうした意思を持っているとは思っていない。中には出世のために、はたまた純粋に自身が術師として大成したいためにと、自身の野望のために入学した者も多いはずだ。ただ、私は目的や動機がなんであろうと、それが結果的に王国や国民を護ることに繋がるのであれば、構わないと思っている」


 ここまで言うと、学園長は一呼吸ついてから言葉を続けた。


「この学園を卒業するのは難関だと言われているが、私としてはそれ相応の実力があれば問題なく卒業にたどり着ける、そう思っている。ここにいる一人でも多くの生徒が卒業できることを祈っている」


 ペラルフェの言葉に生徒らは真剣な眼差しをおくっている。自分たち自身を奮い立たせているようにも見える。




「いよいよここから始まりますね」

 エーデルが隣で呟く。


 オレは、その問いかけに黙って頷いた。


 

 ここまで来るのにも、かなりの時間を要したが、それでもまだ、スタートラインに立ったばかりだった。


 この学園で、決着をつける……そう改めて心に誓った。


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