6話 この話の後に知ったんだけど、この話で僕達が心配してたようなことは全く起きなかったんだって。不思議だなぁ
この回終わったらひとまずペース落とします
「料理をしようとしたら手が切れる、大工をしようとしたら手を打たれる」
淡々と告げられる未来予想図に、僕はただ下を向くしかなかった。
「つーか、ガキがふざけて木の枝折ろうとしたら骨折れるのか、ラノワールのエルフかよ」
「ごめんなさい……」
僕はただ小さくなった。
女の子の親を助けつつ、オーナメントを牽制するために朗唱を使ったことをオーナメント対策課のリメンさんに話すと、リメンさんはそれに感謝しつつも真面目な意見を返してきた。
「……仕方無い、何かあったらそっちに連絡行くだろうから、そうなったら俺らで謝ろう」
「ぎ、ギチムさん……」
「いや、国民に謝るのは俺らの仕事だからそこはいい。次気をつけてくれれば」
そんな話をして、リメンさんは帰っていった。
「……まぁ、」
コンツェルトのみんなだけになったとこで、ギチムさんが口を開いた。
「失敗は誰にでもある」
「そーそー」
そこにイトナキさんが乗っかる。
「手柄は立てたんだから、あとは大人に押しつけりゃいいのよ」
「うぅ……」
「……やっちゃったんだから、」
ロロちゃんが部屋からやってきた。
「あとはお祈りするしかないでしょ?」
「って顔赤っ!」
しかもちょっとふらふらしてる。
「ちょっと無理しちゃって……無理をすると体が弱る。体が弱ると、免疫が弱るものね」
「わー、ちょちょちょっと、はうあーゆー?」
「アイムファインセンキューエンデュー?」
「ワタシカゼヒイテナーイ」
そんなことを言っていると、
「大変大変!」
僕の慌てた声が玄関の外から入り込んだ。
「ん?」
「なんだ?」
「んっんっ、鍵かかってる」
僕の声が困ってるので玄関にみんなでたむろした。
「しょーがない」
そう言うと、
スブブブブブ
鍵のかかった扉を、ボールプールのようにくぐり抜けたのは、
「あ、鈴義くーん、よかったーここでの知り合い少なくてー」
紛れもなく僕の姿だった。
「寺見さん。どうしたんですか?」
寺見さんは僕の住んでた地球やこの星等々を管轄してるとかなんとかの女神様で、手違いで僕を地球にいれなくしたのをかなり気にしててこんな感じで自分の分身を僕に変身させて地球で暮らしている。
「レーギ知り合いか?」
「うん」
「それで鈴義君、なんかこの辺りで、凄い、えっと、魔法じゃなくて、ここでは何て言うんだっけ?まぁとにかく、凄い力を感じたんだけど、心当たり無い?」
「心当たり?」
僕は首をかしげた。朗唱はしたけど、いつもと変わんないし。
「分かんないです」
「んー、そっか」
「……どこまで絞れてるんですか?」
ロロちゃんが尋ねた。
「しょーじきなとこ……」
寺見さんは後ろ頭で手を組んだ。
「私が完璧みがみ様だとしたら、」
寺見さんは手をほどいて、床を指差した。
「この部屋」
「ねーなー心当たり!」
イトナキさんが大声で割り込んできた。
「……なるほど、分かりました」
寺見さんはにっこり微笑んだ。
「…………心当たりは、無いな俺も」
「じゃあおいとまします。なんかまたあって、私のとこまで話回ってきたらまたお願いしますね」
寺見さんは、そう言うと、
「よよよよっ……」
ずぶずぶと扉にめり込みはじめた。
「……ふぅ、連発すると疲れるなぁ」
と思ったら2割ぐらいで一息ついた。
「よ、よく分かんないけど頑張ってください!」
「うん」
「……いや、」
イトナキさんはその様子をじっと見ていた。
「家を出んなら普通に鍵を開ければいいじゃんか」
「たっ確かに!」
寺見さんは僕の顔でビックリしながらスポンと扉から飛び出た。
「確かに、外からなら鍵が無いと入れないけど内からなら……」
ドバゴォォオン!
扉が外から蹴破られた。
「力を……よこせ」
そこから入ってきたのは、ゴーグルを頭にかけた目付きの悪い女性だった。
「…………いや、お前らごときが知るはずないな。時間の無駄だった」
女性は踵を返してすたすた帰っていった。
……
「既にドアがディスアドー!」
僕はドアの残骸を見ながら思わず叫んだ。
「どうした、ターチェンシー?コンツェルトのとこなんかに行って」
ケタケタと男が笑うと、ターチェンシーはゴーグルを男に投げつけた。
「テグロート、こいつ故障している。Xの力の出所が、コンツェルトの家になっていた」
それを聞いたテグロートはブアッハッハと笑った。
「そりゃ傑作だ。あいつらの中にXがいるかもしれんな、なんつって」
テグロートはニタニタ笑った。
「とりあえずおおよその場所は分かった。Xの詠唱は、感知した限りでは、広い範囲の何かに混ぜ混むようなかなり強力なものだ。そんなものを詠唱した後では無事ではいられない」
「だな、でも油断するな。速度第一で頼むぜターチェンシー」
そう言うとテグロートは闇に消えていった。