1話 解説し忘れたけど、時の為政者がカードゲームにはまっててその中で広場や肉屋のカードを気に入っているからオーナメント狩りの集まりをギルドって名付けたらしいよ。暗黒時代とか名付けられなくてよかった
突如世界に溢れたエレメント、そしてそれの影響で現れた呪文とオーナメントは、人類に繁栄と恐怖をもたらした。
……とかなんとか。
「グオオオオオオ!」
「ズリャァァァァ!」
「……いやー、ド派手ですなー、ロロさんや」
「ですじゃのー、れーさん。あ、おにぎり食べる?」
「食べるー。具は何?」
今、僕たち4人のギルド、コンツェルトは、他のギルドがオーナメントと戦っているのを観戦している。
「今日の具材はおニューのものよ。具材だけに」
ドカーンと爆発が起こり、ギルドのメンバーが1人こっちに吹っ飛んでくる。
「ぶつかるっ!」
「『ストロート』」
ロロちゃんの詠唱で地面から風が巻き起こった。風は男の人の体を浮かし、男の人は僕らの前にゆっくりと着地した。
「ロロちゃんないす」
「いえーい」
「おっと呪文か。誰か知らんがありが……」
仰向けからゆっくりと起き上がってこちらを見た人の、顔が固まった。
「ゲッ」
「恩人に向かってゲッはねーだろーよ」
イトナキさんが男の人を軽く睨む。
「……お前らずっと背後でこそこそしてんだな。噂通りだ」
男の人は見下すような視線を僕らに投げる。
「噂、ね……」
ギチムさんはフッと笑った。
「まぁ何をしても捉え方は人次第だからな。それより、」
ギチムさんは男の人を一瞥した。
「恩人に向かってゲッはないだろう?」
「それあたしが言った」
「だけどこれで2人目だ。もう1人で過半数だよ」
「……確かに冷静に考えてみれば、恩人に向かってゲッは失礼だったかもしれない。ごめん……」
これで過半数になった。
「いいよ」
「コンツェルトといやぁ、ろくに呪文の詠唱もできないくせにオーナメント狩りやってる馬鹿の集まりって聞いたが、全く使えないわけじゃなさそうだな。全くは」
「まぁ僕はホントに何もできないんだけどね。ずっと地球に住んでたし」
「リーダーが全く詠唱できない自称異世界人ってのはマジなのか」
「マジのロンだよ。伊達に日本人やってきてないよ!」
「威張るな」
男の人は冷ややかにそう言うとオーナメントのいる方へ目を向けた。
「……気になることは山程あるが、とにかく、ハイエナだけはすんなよ。何もしてないやつらに苦労して取ったエレメント掠められたらたまったもんじゃない」
「りょーかいです」
「……『テン・ファイム』」
男の人は持っていた剣に炎を纏わせると、僕らに何も言わず戦いの最中に走っていった。
「……ロロちゃん、僕たちはどうする?」
オーナメントに目を向けると呪文を沢山食らってて辛そうだった。詳しいことは分かんない。
「んー」
ロロちゃんはじっと前を見ると、パンと手を打った。
「帰ろっか」
「うん」
「うぃー」
「まぁ……そうだね……」
座ってだべっていた僕らは立ち上がった。
「なんだー?嫌そうじゃんかギチム」
イトナキさんが声をかける。
「別に、俺は傍観者だ。誰かに対し何かを思ったりなんかしてないよ」
「誰かに対し?」
イトナキさんは首をかしげる。
「……あーー、お前」
イトナキはにやついた。
「面と向かってれーぎを馬鹿にされたから怒ってんだぁ」
「おお、お、俺は傍観者だ」
「それで見返してやろうってあいつらに加わ……」
「わーっ!わーっ!傍観者!傍観者!Schaulustige!」
「なんて?」
「ドイツ語ね」
ロロちゃんの解説。
「とととにかく、俺達が出る必要はないで意見は一致している」
「やれやれ、目を離すとすーぐに素直じゃなくなるんだからさーぁ」
「ぬぐぐっ、と、ともかく、帰るぞ」
というわけで、何もしないで帰ってきました。