表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女輪廻協奏曲 ノギクとヴェドラナの愛  作者: 相羽裕司
第一部「歴女と聖女」
7/38

第七章「癒しの雨」

 第七章「(いや)しの雨」


 三十秒が経過。


 ここで、ミティア君との糸をもう一度オン。


 わたし達の願う世界(ばしょ)に辿り着くためには、ミティアくんの協力も必要になるわ。


 わたしを媒介にしてヴェドラナの情報が伝わってきたミティアくんから、僅かな混乱が伝わってくる。


 だけど、ミティアくんはゆっくりと立ち上がり、もう一度聖剣を発動させてヴェドラナに向かって正眼の構えを取ってくれた。


 糸を通してわたしに伝わってきた、ミティアくんの言葉は……、


(ノギク。俺には、何が正しいことなのかまだ分からない。でも、糸を通して、ノギクを経由して伝わってきた「聖女」の心の清らかさが、何故だろう、俺は無視できない。そんなのは綺麗事だって、分かってるはずなのに。もしかしたらこの世界に、どこかの世界には、俺やイナ(・・)みたいな人間も「見つけて」くれる人がいるんじゃないかって。そんな気になってくる。だから、今は――)


 ミティアくんが聖剣でヴェドラナに向かって斬りかかる。


(今だけでも、綺麗な何かを消えないようにする!)


 偽物の斬撃がヴェドラナに向かう。これは、演技だ。表面上は、敵であるユーステティア帝国の「聖女」に、スラヴィオーレの騎士隊長であるミティアくんが攻撃しているようにしか見えない。


 短い攻防から、ヴェドラナの力量を察したミティアくんは演技といえども凄まじい力と(はや)さを斬撃に込めた。


 そのタイミングに合わせて、ヴェドラナはミティアくんの攻撃を避けるフリ(・・)をして、バックジャンプでわたしから間合いを放す。


 糸を通してわたしが伝えた最後の言葉には、ヴェドラナはちょっとだけはにかんだ。


 微笑(びしょう)も、敵に向けるにはおかしなものだから、すぐにヴェドラナは(りん)(ほお)を引き締めて、敵に向けるのには正しいキリっとした表情になった。


 そうして。


「この世全ての、毒を、傷を、痛みを、優しい姿へ返す!」


 ヴェドラナは両腕を左右に広げて、呪文を唱えた。ヴェドラナの体がまばゆく輝き始める。


「『ナイチンゲール・アミターユス』!」


 ミティアくんが、宗教画に描かれた聖者ような(たたず)まいのヴェドラナに対して、何か神聖な存在を見るように目を細めた。


「『究極の魔法』だ……」


 うん。ヴェドラナがわたしに伝えてくれた情報にもあったわ。ヴェドラナを中心に広域の全ての存在を(いや)すことができる、破格の魔法。


 空から、たくさんの光が降り注いでくる。


 光の一つ一つは星のようで。


 星が優しく降り続ける様子は恵みの雨のようだったわ。


 光に触れた存在は、あまねく傷が癒されていく。


 負傷した兵士も、街の人も。竜も。「(きゅう)」から生まれたモンスターでさえも。


 戦場で傷ついたことは何かの間違いで、それぞれの存在が、本来のあるべき状態に戻っていくみたい。


 そんな、万物を癒す「究極の魔法」なんだけれど。


 でも、ヴェドラナの「究極の魔法」には弱点があって。


 ヴェドラナの「究極の魔法」には回数制限があるの。生きている間に七回しか使えないわ。


 この後、帝国軍とスラヴィオーレ軍に戦闘がある度に、両軍の傷ついた人たちを回復するとして。


 ヴェドラナは「究極の魔法」を二日前に一回、今回一回使ってる。


 つまり、敵にも味方にも犠牲を出さないで戦闘ができるのは、あと五回ということだわ。それまでに、何か両国の戦争を終わらせる作戦を考えないといけない。作戦を考える以前に、世界のヒミツを解き明かさないといけない。


 戦場の全ての存在を癒し終えると、ヴェドラナはジャンプして、再び黄金竜にまたがったわ。撤退していく。帝国の竜騎士(ドラグナイト)部隊の指揮権も、ヴェドラナにあったみたい。今回の戦闘はこれまでね。


 去りゆく竜たちの後ろ姿を眺めながら。


 わたしは、ヴェドラナが伝えてくれた情報から、わたしがやるべきことを見出していたわ。



  /第七章「癒しの雨」・完

 第八章へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ