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少女輪廻協奏曲 ノギクとヴェドラナの愛  作者: 相羽裕司
第一部「歴女と聖女」
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第五章「約束」

 第五章「約束」


 ヴェドラナの「殺す」という言葉をそのまま受け取って、ミティアくんはわたしを守るために再び聖剣を発動させた。


 大きくヴェドラナに向かって踏み込んで、必殺の突きをくり出す。


 いけないわ。ミティアくんは確かに強いのだけれど。


 二人と糸を繋いだ経験から、わたしに断言できること。


 ヴェドラナは、もっと強いの。


 ヴェドラナは、ミティアくんの疾風(しっぷう)の突きを紙一重でかわすと、そのまま間合いを詰めてミティアくんの肩口に鋭い正拳(せいけん)()きを撃ちこんだ。ミティアくんが吹き飛ばされる。


 ヴェドラナは空手の達人なの。小学校の時に既に全国大会でも優勝するくらい強いって言われていたわ。ヴァーチャル世界で会ってる時に、スロヴェニアに帰ってからもトレーニングは続けてるって聞いていたから、今のヴェドラナがどれくらい強いかなんて想像がつかない。


 そして、ヴェドラナの方がミティアくんより強いとか、そういう話の前に。


 ヴェドラナはわたしを殺そうなんて、思っ()()()()


 言葉は、表面的に発せられたものと、発した人が本当に心の中で思っていることが、違っているということがあるわ。


 再び繋がった糸を通して、ヴェドラナの本当の気持ちの方が伝わってくる。


(ノギク、この世界にはヒミツがある)


 ヴェドラナ? ええ。たぶん、わたしとあなたは敵同士だと周囲に思われていた方が都合がよいのね?


(私じゃ無理だから。


 今から心をオープンにするから。


 ノギクより三日早くこの世界に「召喚(しょうかん)」された私が見てきたこと、聞いてきたことを、ありったけ持って帰って!


 ノギクだったら、絶対ヒミツを解き明かすことができる!)


 やってみる。帝国軍が、スラヴィオーレの兵士たちが、街の人たちが、お城の屋根にいるわたしたちを見ている。不自然に思われないようにいられるのは、三十秒くらいかしら。いいわ、あなたの三日間を、ありったけ教えて。糸による「繋がり」をオン。めっちゃ、オン!


 わたしとヴェドラナを繋ぐ赤い糸が、ひときわ紅く輝きはじめる。


 糸を通して、ヴェドラナの三日間が、ヴェドラナの情報が、ヴェドラナの感情が、ヴェドラナがわたしに流れ込んでくる。


 伝わってきたことは、たとえば。



 皇帝と帝国の実質的な支配者について。


 世界(リュヴドレニヤ)の地下にある「存在」について。



 そして、うん、そうだね。



 ユーステティア帝国のフツウの人々の笑顔について。



 一気に流れ込んでくる情報に脳がオーバーフローしている中、それだけはハートに刻んだ。忘れてはいけないこと。見ないことにしてはいけないこと。


 ミティアくんに、大事な妹さんがいるように。


 わたしに、大好きなお父さんとお母さんがいた(・・)ように。


 今のわたしから見れば敵である帝国の騎士や兵士たちにも、それぞれ大事な家族がいるんだ。守りたい人がいるんだ。


 ヴェドラナの優しい心の光は立場や身分や、ましてや年齢や性別もろもろといった表層のカテゴリで誰も判別したりしない。誰でも、照らしてあげられたならって思ってる。ヴェドラナの慈愛が、わたしに注ぎ込まれてくる。


(ノギク、私の願い事は一つ。


 私とノギクで、世界を救いたい)


 ええ、ええ。聞く人によっては、そんな綺麗事をとバカにするのかしら?


 関係、ないよね。十年前の「約束」、ずっとずっと、覚えていたわ。


 わたしたちがいた世界と、この世界(リュヴドレニヤ)は違う世界かもしれないけれど――。


 わたしとヴェドラナが二〇一一年に「約束」したこと。


 わたしたちが生きている間に、この世界を――、



 全ての存在の傷が癒されて、全ての存在に居場所がある場所にすること。



 今こそ、果たしてみせましょう!


 限られた瞬間。わたしからも伝えよう。


 わたしの方から伝えたことは、たとえば。



 合図の信号弾について。


 時間は、三分後ということについて。



 それから、それから。


 そろそろ、時間だから、最後にとりあえず。


 ああ、こういう時、こんな言葉しか出てこない。



――ヴェドラナ、愛してるから負けないで。



  /第五章「約束」・完

 第六章へ続く

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