第二十四章「セイレキ二〇一八年~仙台」
第二十四章「セイレキ二〇一八年~仙台」
中学の終わりの年。
わたしは、三か月のお休みをとったわ。
ひいお祖父ちゃんが、横になったり、眠っていることが多くなったから。
お医者様にも相談したのだけれど、特定の病気というよりも、寿命が近づいているのだと仰ったわ。
大震災以降、勉強ばかりしてきたわたしだったのだけれど。
少し、お休みして。
ひいお祖父ちゃんの側にいて、今のうちにお話しておく時間が、とても大事なことのように思えたの。
地域の介護サービス、有料の看取りサービスなどの助けを借りながら、ひいお祖父ちゃんのお世話をさせてもらったわ。
三か月の間に。
インドの聖者、アメリカの富豪、ロシアの政治家、中国のアーティスト、スペインのロボット工学の博士、日本の路上生活者・サラリーマン・主婦、などなどが藤宮邸を訪れてきたわ。ひいお祖父ちゃんは、交友関係が広い人だったのね。
一人一人が、静かに、穏やかに、そして楽しそうにひいお祖父ちゃんとお話していたわ。
そして、みんな帰り際にわたしの方に向き合って、同じことを言った。
――何かありましたら。連絡をください。
ひいお祖父ちゃんが、頂いた連絡先は手帳にまとめて大事にとっておきなさいというので、わたしは一冊のピンクの手帳を作ったわ。
手帳の連絡先覧は、その三か月でいっぱいになった。お守りみたいなものね。今でも肌身離さず持ってるわ。
その日。ひいお祖父ちゃんは、窓から差し込む温かい日差しの中で気持ち良さそうにしていた。
「お日様ぽかぽか。幸せだなぁ。ねえねえ、乃喜久さん。ワシねぇ、『輪廻』、つまりね、命は一度だけのものじゃなくて、次の世界、次の命へと続いていくと思ってるがね。今回の命はワクワクだったから、次の命は、もっとワクワクかしらねぇ。優しい優しい乃喜久さん。あんまりカワイイから、次の世界でも、あなたとはちょっと縁があったらイイなと思うとるがね」
「たとえ次の世界や、次の命があるのだとしても、わたしは今、お祖父ちゃんとお別れするのは寂しいわ」
「乃喜久さん。寂しくなったら、あなたの名前の意味を考えてみるとよいよ。たいてい、名字には家の、下の名前にはその人の天命が現れている。『藤宮』の姓の中にはワシもご先祖様もいて、あなたを守り続けるからね。あとは、『乃喜久』という名前を、ワクワクと歩いていけばイイがね」
そうして、二〇一八年。仙台に桜が咲く頃に、ひいお祖父ちゃんは旅立っていった。
歴史を勉強する過程で、世界には様々な宗教があることを学んだわ。死んだ後にどうなるのかなんて、今はまだピンとこなくて、わたしはわたしでこれから考えなければならないけれど。
もしお祖父ちゃんが言うように、「輪廻」みたいなものがあるのなら、わたしも、次の世界で、次のわたしでも、お祖父ちゃんと「縁」があったらイイなって思うわ。
ひいお祖父ちゃんのことを考えると、いつも胸が温かくなる。
ひいお祖父ちゃんの言葉が、今でも胸に木霊している。
「乃喜久や、ワクワクのピースじゃぞ」
うんうん。お祖父ちゃん。わたしは、ワクワクのピースだよ。
/第二十四章「セイレキ二〇一八年~仙台」・完
第二十五章へ続く




