第十五章「似た街アカリ」
第十五章「似た街アカリ」
そんなこんなで、夕食時。ミティアくんとイナちゃんの家を訪れて、イナちゃんが作ってくれたシチューを三人で食べた。
「おお。イナ、おいしい」
「今日はイイお肉が手に入ったんだよーう。じっくり煮込んじゃった」
にんじん、ジャガイモ、それにカブも入ってる。野菜たっぷりで栄養にも気をつかってる感じ。イナちゃん、激務のミティアくんを労おうとがんばったんだよね。
それはそうとミティアくんもお腹が空いていたのか勢いよく食べていて、頬にシチューがついていた。
これ、そっと指でとってあげたらイイのかしら?
言葉で指摘したら、失礼だったりするかしら?
なんてぐるぐる考えていたら。
「お兄ちゃん、シチューついてるよ~」
イナちゃんが人差し指でミティアくんの頬のシチューをとって、そのまま自分の口にもっていった。
うん。兄妹だからね。ちょっとイイな、そういうの!
しばらく歓談して、わたしはおいとますることにした。ミティアくん、少し疲れてる感じで眠そうだしね。
「送っていこうか?」
申し出てくれたミティアくんだったけれど。
「まだそんなに暗くないから大丈夫」
それに。
「大事な人の側に、いられる時にできるだけいた方がイイよ」
戦時下なわけだし、とはつけ加えなかった。
それは、ミティアくんもよく分かってることだと思うから。
「じゃ、イナちゃんまたね」
三本の指でひいお祖父ちゃんいわく「ワクワクサイン」を作って振ってみると、イナちゃんも同じポーズで、
「お姉ちゃんも、またね~」
と両手で「ワクワクサイン」で返してくれた。
二人に背を向けて、街路に出る小道を下りはじめると。
(ノギク、今日はありがとう)
と、糸を通してミティアくんの言葉が伝わってきた。
わたしは多くを語らずに、
(こちらこそ)
とだけ伝え返した。
振り返らずに、夕闇のスラヴィオーレの街を、一歩一歩、お城に向かって歩いていく。
街には灯りがついていた。
電灯ではない。でもけっこう明るいから灯篭ではなく瓦斯灯? だとしたら、このリュヴドレニヤという世界は十九世紀水準の技術がある?
なんて、歴女っぽいことも考えてしまうけれど。
この世界の謎に関しては少し置いておいて。
(キレイだなぁ)
きっと街のみんなも家族や友人たちと夕飯を食べていたりするのだろう。
暗がりの中で揺らめく人々の生活の火――フツウの街アカリは、ちょっと夕闇時の仙台の街に似てるかもなんて思いながら。
この日。わたしは、てくてくとお城へと続く道を帰っていったわ。
/第十五章「似た街アカリ」・完
第十六章へ続く




