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境界戦争  作者: 永宮 セイラ
プロローグ
7/51

魔術の使い方

「碧さーん! 久しぶりー」

 廊下を歩いていると、突然後ろから軽快な声が聞こえていた。声に反応するように振り返りながら不満の声を上げる。


「千紗、仕事で沖縄行ってただろ。なんでここにいる?」

「早く終わったから早く帰ってきた」


 蓮も振り返ると、二十代前半であろう女性がいた。女性と呼ぶには少しあどけなさがのこる顔立ち。肩口で切りそろえた髪にはウェーブがかかっている。着ている服も、最近の流行を先取りしたような物を着ている。蓮にはわからないが、おそらくどこかのブランド物だろう。


「頼むから連絡ぐらいしておいてくれ。それに時間が空いたなら観光でもしていればよかっただろ」

「あたしそう言うの興味ないし。その子は?」


「『魔術』を発現させた、七人目の魔術師だよ」

 碧の言葉に、千紗と呼ばれた少女は怪訝そうに訪ねる。


「あたし達以外にはいないんじゃなかったの?」

「彼は〝波動〟を受けて魔術師になったんだよ」

 その情報に、驚きをあらわにする少女。


「えっ、〝鏡〟に行ったって事?! なんで!」

「く、クラスメイトに連れてかれて…………」


 それを聞いて、驚きから一変、呆れたような表情に変わる。

「なんでそういうのについて行っちゃうかなー。それでもっと危ないことに巻き込まれてたら意味ないじゃん」

 ぐうの音も出ない。


「あ、そうだ千紗。蓮くんに授業してくれない?」

「は?」

 千紗は間抜けな声を上げる。


「蓮くんは少し前まで何も知らない一般人だった。まだ詳しいことは話せてなくてね。戦闘訓練も含めて千紗がやってくれるなら助かるなぁ……と」


「あ、納得です。仕事は終わってますし、別にいいですよ」

「それは助かる。蓮くんの資料は渡しておくから、後は頼んだ。訓練室は空いてるから」

 大きめの封筒を渡して、碧は去って行く。


「さて、改めて、あたしは夜桜千紗。呼び方は何でもいいよ」

「倉見連、高校二年生…………です」

「敬語なんていいよ。仲良くしようぜ、少年」

 手でVサインを作り、笑いながら言う千紗。


「随分と大雑把だな。千紗さんの『魔術』は?」

「その『さん』付けは勘弁して欲しいな。くすぐったい。あたしのは『空中浮遊』だよ。自分と触れた物を浮かることができる」


「名前の通りなんだな」

「う~ん、この書類作ってるの碧さんだし、こんなわかりにくく書くとも思えないんだよ」

 それは、長期間碧とともに仕事をこなしていたからこそ言えることだ。少なくとも蓮は、そう断言できるほど碧やここの職員と時間を共にしていない。

 そう考えながら、千紗の後に続いて再び訓練室に向かう。



 訓練室に入ると、千紗は隅に置いてあるパソコンを操作する。

 すると、中央にある投映機が作動し、光を映し出す。瞬きのあと、一瞬にして景色が変わる。

 無機質な部屋から一変、辺り一面の草原へと景色が変わる。


「これは……映像なのか?」

「そうだよ。あたしも初めて来たときは驚いたよ。最新技術を惜しみなくつぎ込んだ部屋なんだって」

「建設にいくらかかってるのか想像もつかないな」

「ここの建設費も維持費も全部国連が出してるから、あたしもよく知らないんだよね」


 驚くほど適当に言い放つ。大丈夫なのか? とも思ったが、意外と大丈夫そうなので黙っておく。

「碧も言ってたけど、ここはまだ小さい方なんだろ?」

「うん。最近は殆ど誰も使ってないね。別の場所に本格的な格闘場がいくつかあるし、みんなそっちに行ってるね」


 平然という千紗に驚きながら、それだけの技術をつぎ込むと言うことに、事の重大さを改めて実感する。

「なるほど。それで、魔術の使い方は?」


「そうだったね。……うーん、感覚で言うと、血液とかと同じように体に液体が流れてる感じかな。それを手とか足とか、使いたい部分に流すと魔術が使えるようになった……んだよね。あたしは」

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