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境界戦争  作者: 永宮 セイラ
プロローグ
5/51

魔術

「…………はあ。結局、俺に拒否権はないんだろ? 一つ質問だ」

 疲れたようにこめかみを押さえながら、蓮が聞く。

「なんだい?」

「さっき、前線に出るって言っていたが、前線って言うのはどこだ?」

「やはり君は、頭がいいね。『境界世界』の人間は、元々こちらの世界を滅ぼす気でいる。そしてあちらは、我々よりも『魔術』について熟知している。後手に回れば勝機はほぼなくなると言っていい」

「確かに、そうだな」

「だから、彼らが来る前に、こちらから行くのさ」

「それは…………可能なのか?」

「移動手段の話かい? 〝鏡〟の防衛装置としての機能の一部が壊れていると言っただろう。大規模な部隊を送ることはできないが、少数ならば問題ない」

 再び蓮は考え込み、はっとしたように言う。

「でもそれって……敵の主力に少数で突っ込むって事? 流石に無謀すぎないか?」

「否定はできない。いくら『魔術』を使える人間が限られているとは言え、数においても地の利においても、明らかに不利だろう」

「それじゃあ……」

「でも、さっきも言ったとおり、こちらに来た侵略者に対処していては負ける。『境界世界』には、送り込むだけの戦力は十分にあるからね」


 とっくに職員は機械とともに撤収しているが、長話で蓮達は移動できずにいた。

「取り敢えず、司令室に移動しよう。紹介しなきゃいけない人もいるんだ」

 扉を開け、碧の後をついていく。

「お、丁度いるな」

 碧が、司令室の真ん中でモニターとにらみ合っている少女を見て言う。少し気になってみてみると、〝鏡〟で蓮の前に現れた少女だった。

 腰までとどく艶のある黒髪、すらりとした細い腰。足は細く、顔のバランスも絶妙だ。「完璧」としか言いようのない少女は、蓮達に気づくことなく、職員と会話をしながらキーボードを叩いている。

「彼女はレアノリア。七人の魔術師の一人にして、僕がいないときの全体の指揮を執って貰ってる。いわば助手みたいなものかな」

 名前に反応してか、レアノリアは蓮達に気づき、近づいてくる。

「碧さん、その人、誰です?」

 透き通るような声で、レアノリアは言う。

「君が助けた、〝鏡〟の波動の生き残りだよ」

 波動というのは、あの光と熱のことだろう。

「ああ。魔術を発現した人ってその人だったんですか」

 興味なさそうに言う。

「そう。倉見蓮くん。君らのチームに入ることになったから」

「えっ…………流石に無理があるんじゃないですか? 素人でしょ。魔術知識とか対人戦闘以前に、何も知らない一般人でしょ」

 無表情から一転、驚きに変わる。

「そんなこと言っていられない程、うちは人員不足なんだ。君もわかっているだろう」

「そうですけど…………その人の『魔術』は?」

「データだと……〝電気を操る〟事ができるみたいだね。詳しいことは、実際に見てみないとわからないけど」

「大丈夫なんですか? 今から教えるにしても、あんまり時間ないですよ」

 会話内容が何一つ理解できない蓮。口を開こうにもなかなかタイミングが掴めない。

「そこら辺は僕がなんとかするさ。レアも、なにかしら仕事回ってくるかもしれないから、そのときはよろしく」

 少女が小さく頷く。そして、視線を蓮に向けて言う。

「レアノリア。レアでいいわ。よろしく」

 驚くほど端的な挨拶だ。蓮も、同じように答える。

「倉見蓮。高校二年生。よろしく」

 自己紹介を終えると、すぐさま踵を返し、正面モニター前に戻っていく。


「さて。他にも紹介しないといけない人はいるんだけど、生憎今はいなくてね。また別の日に紹介するよ。取り敢えず中を案内しよう」

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