世界をかけた代理戦争
どうもこんにちは。永宮セイラです。
小説を書くことに慣れてないので、誤字脱字あるかもしれません。見つけ次第訂正していくので、よろしくお願いします。
――――今から十年前、日本の首都・東京に、巨大な鏡が降ってきた――――
チャイムが鳴り、廊下がだんだんと騒がしくなってきた。昼休みを告げるチャイムだ。じきに学食、購買ともに生徒で溢れかえるだろう。
「おーい、倉見。ちょっと話いいか?」
教室の真ん中から、倉見蓮を呼ぶ声がする。クラスのリーダー格の男だ。名前は確か……山本。
取り巻き連中がニヤニヤしているところを見ると、リンチかカツアゲのお誘いだろう。蓮は、高校一年生の時に問題を起こし、それからずっと腫れ物扱いだ。だが、今はこの話はおいておこう。
「嫌だよ。面倒事嫌いだ」
返事を待たず、逃げるように教室を出る。
こういうときは、人の寄りつかない、旧校舎の自習室もとい空き教室へ向かう。静かで集中できる上、高確率でこの綾薙高校唯一の友人に会える。
「あら、また教室から追い出されたの?」
「そうだよ。リンチとかつあげのお誘いがあってな。面倒だったから逃げてきた」
「そう。その面倒事とやらは、私のところには持ってこないで欲しいわね」
「努力はするよ」
来る途中に購買で買ってきた焼きそばパンを頬張る。
「そういえば今日、あなたのクラスに留学生が来るって話だけど、何か聞いてる?」
「聞いてない」
「はあ……あなた、もう少し他人に興味を持った方がいいと思うわよ」
「もう十分持ってるだろ」
「全然十分じゃないわよ。世間一般では、人の名前を覚えることを『興味を持つ』とは言わないのよ」
「じゃあ、どのくらいならいいんだよ」
「そうね……『人と話して、何が好きか、嫌いか。どんな性格か。相手を詳しく知ろうとすること』かしらね」
「難しすぎないか?」
「みんなやってる事よ」
「マジか…………」
「ええ」
「それで、その留学生はどんなやつなんだ?」
「さあ。担任も詳しくは話していなかったし、来週には会えるんじゃない?」
今日は木曜日。金曜日に転入して次の日から休日はないだろうとのことだ。
蓮は深く考えず、中身のなくなったパンの袋を丸めて潰し、自習室を出る。
「おい倉見、俺たち今日〝鏡〟の近くまで行こうってなってな。お前も来ないか?」
「行かない。興味もない」
「そう言うなよ。今日来てくれたら、二度と絡まないって約束するからさー」
平穏を望む人間としては、これ以上ない申し出だ。
「本当に、二度と話しかけないといえるのか?」
「約束は守るよ」
思えば、そんな約束のために立ち入り禁止区域に入るのは、愚かな選択だといえる。それでも蓮はどうしても平穏な学校生活が欲しかった。
五限目開始のチャイムが鳴る。
特に意味もなく、〝鏡〟が降ってきた日のことを思い出した。
――――――――
蓮が七歳の時、事件は起こった。昼間の雲ひとつない快晴、そんな日に、急に真っ黒い雲が渦巻き、東京全体を覆い尽くした。数時間後、渦巻く雲の中心に穴が開き――全長数十メートルの巨大な鏡が、日本の中心、国会議事堂に落下してきた。幸い国のトップ達は海外出張中で、休日のために人的被害も少なかった。
――――――――
〝鏡〟の周辺は現在、立ち入り禁止区域となっている。理由はいくつかあるが、大まかな理由はひとつ。
〝鏡〟の調査に行った調査団が、誰一人として帰ってきていないこと。情報によれば、調査団は、〝鏡に吸い込まれた〟と。
調査団の消失の確認後、周囲は立ち入り禁止、常に警備員が徘徊している。中に入るのは不可能に思える。
放課後、約束通り〝鏡〟へ向かった。円形にできあがった大きなクレーターの中心に、大きさ十メートル程の五角形の巨大な鏡がある。半径二百メートルに背の高い柵がある。唯一中に入るための入り口も、頑丈に固められている。
「学校からは意外と多いからな。もう夕方になっちまった」
山本が言う。
「だけど、どこから入るんだ? 柵の外は警備員いるし、柵を上るにも有刺鉄線がある」
「安心しろ。警備の薄いところに別に入り口作ってある」
無駄なことに用意周到なことに呆れながら、山本一行についていく。
隠してあった抜け穴から中に入り、坂を下り中心に向かうこと約二十分。〝鏡〟の足下に到着した。
『境界戦争』の1話を読んでいただき、ありがとうございました。
1000文字から1500文字と1話ずつの文字数は少なめにしようと思っています。これからもお付き合いください。