どちらが現実?
僕はよく寝ている時夢を見る。
カラーだから夢とわかりにくい。
だから勘違いすることも多い。
今日もカラーで夢を見ていた。なぜ夢ってわかったかって?それはね、もう一人の自分が鏡ごしに自分が動いている姿を見ているからなんだ。
夢の中の僕はとても楽しそうに過ごしている。周りが人で溢れていた。
仲よさそうだ…。
僕はというと、そんなに人付き合いはいい方じゃない。どちらかというと苦手だ。
人の醜い部分ばかりを見てきたせいだ。
だからと言って逃げてばかりじゃないよ。
今日だって…。うん、そうかな?ちょっとしたことがあって嫌になってた。
まぁ、大したことしてないけどね〜。
それはね、仲が良かったやつなんだけど些細な事で喧嘩となりガチでぶつかり合った。いつもならそれこそ喧嘩した後すぐどちらも折れて仲直りしておしまいなんだけど、今回は違ったんだ。
そいつ…全然許してくれなくって僕は腹が立ったので「お前のダチやめるからな!」って叫んだらそいつも「俺もやめるわ!清々するぜ。」と吐き捨てて居なくなった。
それから三カ月が過ぎた頃、ダチの間でなんか知らないけど噂が出て来た。それは以前僕がダチをやめると言ったそいつの事で、それ以降行方不明になっているという事らしい。何かの冗談だろうと思ったが、あちこちから聞こえてくるのは間違いなくそいつで、連絡が取れないって事。
親に問い合わせしてみても、親も連絡が取れないという。なんだかおかしなことになって来たぞ?
そんな事今まで一度もなかったのだ。そうだ、これはきっと夢に違いない。そう思って何度も夢から覚めろとほっぺたをつねったりした。そしたらね?偶然かたまたまかわかんないんだけど、目が覚めたんだ。そう、これは夢だったんだ。
ホッとしたけど、なんか無性にダチに会いたくなった。
で、連絡を入れてみたが、何故か繋がらない。
何で?
夢…じゃ無いよな?
さっきのは夢…じゃなかったのか?
僕は少し気になり始めていた。一旦気になりだすと止まらない。。。
友達に片っ端から連絡してみたが、誰一人としてそいつの連絡先に詳しい者はいなかった。両親を探し出して問い合わせてみても答えは同じだった。
「なんてこった。マジかよ。」
皆、頭をかしげる。
時間だけは過ぎてゆき夜になってしまった為、一旦御開きとなる。
そして翌日また新たに捜索する事になるが、結果は同じだった。
「ほんとにどこに行っちまったんだよ?まさか…神隠し…とか?」
「そんなわけあるか。どうせどこかにでも出かけてるんだろ?時期に帰ってくるって。」
「…ああ、そう、そうだな?帰ってくるよな?」
僕らはそれぞれが仕事を持っている為、そうそう長くは捜索できなかったのだ。
それからひと月が過ぎた。
その後どうなったのかを聞いてみるが、皆はわからないと言うばかり…。
これは夢に違いないと勝手に思った僕は何度も頬をつねるが目覚める事にためらいがあるのか目が覚めない。
でもね?夢だとは思うんだよ。
だってさ〜、普段仲が悪い奴が近づいてくるなんてありえないからだ。
【これは夢に違いない。そうだ、夢だ!】
ただ目が覚めないだけだ、と。
でもね、1つ言えるのはどちらも目が醒めるとどっちがどっちか分からなくなるのがいたい。そんなことあるかーって言いたいのもわかるけど、実際がそうなのだから困ってしまう。
【夢ならさめろ!頼むから…。アイツがいなくなるなんて…マジかよ。】
その日の夜、夢を見た。
それは真っ暗な中だった。
何かに入れられている感じがする…。
それが何なのかはわからない。
携帯を持っていたのを思い出し、電源を入れるが目の前は木の板のようなものがあるだけだ。これも夢?なら何でここにいる?
写真を撮っておこうと思い、思わず自撮りしてしまった。撮り直したが、板があるだけ。失敗した自撮り写真を見た時、思わず叫びそうになり慌てて口をつぐんだ。だって、その写真に写っているのは居なくなったダチ…だったからだ。
何で僕がダチの顔をしてる?
まさか正夢?ダチの体験を僕がしてるって事?
恐怖で体が震えてきたが、このままではダチが危ないと思い、写真に取れるだけの写真を撮ってみてみた。けど板の周りには何も書かれておらず目印になりそうなものが見当たらない。
何かないか。
ポケットに手を突っ込んで入っているものを出すが、たいしたものはなかった。
【どうしたらいい?どうしたら…。】
足元に何かあるのに気づいたのはその時だった。
くぎぬきがあった。
これで何とかなるか?
やるだけやってみようと思い板の隙間にくぎぬきを突っ込んだ。無理やり中に入れると隙間がちょっとだけできた。そこに無理やりさらにねじ込み、隙間を広げる。
そしたら陽の光が差し込んできたようだ。
助かった〜。正直思ったね。
ダチの事もこれからなら探せるやと思っていた。
だけどね?違ったんだ。
助かったと思ったのにそこは何もない建物の中だった。真っ白に壁が塗られている。
高い位置にガラス窓があるが、高くて見えない。
閉じ込められていたのは長い箱の中だった。
木の箱のようだ。
その箱を引っ張り出して壁に立てかけてみた。
すると何とかなりそうだとわかり、そっとゆっくりとその箱に乗って外を眺めてみた。
そこはどうやら海辺に高い建物のようなところらしい。
光の反射で海が見えた気がした。
他には他には?探したが、これと言ってめぼしいものはなかった。
ドアがあるが鍵がかかっているようでピクリともしない。
本格的に困ったことになったと思った僕は一度寝てみようとふと思った。特に意味はないが、これが夢だったらと考えてのことだ。
部屋の隅で横になり眠りについた。
寝られたからこれは夢?
なら起きたらどうなる?って思ったよ。
夢の中で僕は何度も起きろと念じていた。寝てた理由なんか忘れていたのに起きなきゃとだけは覚えていたようだ。
体が冷えてきたように感じ、寒さで目が覚めた。
そこは…布団の中だった。
どうやら自分の布団から出てしまっていたようだ。
覚えていることだけを紙に書いて何度も読み返してみた。
白い壁。高い位置にある窓。近くに海?らしきものがある。
それだけだ。
他には他には??
う〜ん、分からない。
何県かさえもわからない。
ダチがいなくなってもうすぐ半年。
生きてるのかさえわからなくなっている。
ボーッとしてるとダチが目の前に現れる。見間違いか?
胸がドキドキする。
思わず声をかけた。
「おい、お前、まだ生きてるか?」
無言でその場からかき消すように消えてしまったダチ。焦りはあったが不思議と恐怖はなかった。
「何かないか?何か…。そう言えば。。。」
そう言えば窓から外を眺めていた時、近くを誰かが歩いている音が聞こえていたっけ。ザクッザクッと靴音が聞こえた気がしていたのだ。
砂利があるのかもしれない。そう思った。
僕らがよく遊んでいた場所で似たような場所があることをふと思い出したのだ。
それはあまり近寄らない場所だ。
寂れた漁村…。
行ってみる価値はあるかもしれない。仲間たちに話し、皆でそこに行ってみることにした。
電車とタクシーを使って片道1時間はかかった。
そこは寂れた漁村で、ほとんど村人はいなかった。
廃れた場所だ。
朽ちかけた建物があちこちにあった。
その中で唯一新しい場所があった。
それは真新しく壁が真っ白の塗られた蔵だった。
出入り口には鎖で繋がれていて開けることができない。
ドンドンドンとドアを叩くが何の反応もなかった。
ここにいるのか不安だったが、記憶していた場所に似ていた。
村人を探しに二手に分かれて捜索した。
するとすぐに村人が見つかった。
事情を話してからを開けてもらうことができたのは幸運だった。持ち主だったらしい。
ガチャガチャと鍵を開ける音がしてドアが開いた。
仲間全員は中に入らず2人が中を確認する事に。
するとうわっと声が聞こえてきて2人が慌てて逃げるようにはってきた。
「おい、どうした?いたのか?」
「あ、ああ、いた。いたが…オエッ。」
仲間の一人がそこで吐いた。
村人が入ってきて怒ったが、匂いがしてそちらを見た時腰を抜かしていた。
僕も仲間の元へ向かったが、そこにあったのは…変わり果てたダチの亡骸だった。
干からびていたのだ。
その匂いとその状態を見てしまい、蔵から逃げるように飛び出し外でゲーゲと吐いた。
村人は慌てて携帯から警察に電話をかけた。
死体が見つかったと…。
ダチは部屋の隅で冷たくなっていた。
そう、まるで僕が寝ていた格好と同じだった。
と言うことは僕がダチに問いかけた時、すでに死んでいたことになる。
ダチは何も言わずに消えてしまっていたのが事実だったからだともっと早く気付けば良かった。後悔しても後の祭りだ。
でも一体誰が?
ダチに恨みを持つ奴なんかいたか?
分からない。
だからと言ってこのまま警察に全て丸投げでいいかといえば違うだろうと言いたい。
で、交友関係を当たったよ。でもさ、刑事じゃないから聞ける範囲はそう多くなかった。
でもさ、友達だからと言うと口が軽くなるものも確かにいた。
そして、…わかったことと言えば刑事さんが言っていたこととほとんど変わらない。唯一違うのは僕が体験してたってことくらい。だから現状を保存することが容易かったのだ。
警官が来てからはバタバタして喋る機会もなかった。
でもさ〜、ダチの遺体が運ばれるとポツリポツリと仲間が喋り出した。
「あいつ、なんでここにいたんだ?ここ、…蔵だろ?鍵もかかってたから誰かに閉じ込められた…とか?」
「だったら犯人がいるんじゃないのか?じゃなきゃおかしいって。」
「だな。でも誰だ?恨み買う奴だったか?」
「いやぁ〜それはないと思う。そんな話聞いたこともなかったし…。」
「じゃあ誰が?」
謎は深まるばかりだ。
それからしばらくして警官が僕らのもとにやって来た。
なになに何か進展でもあったのか?と皆期待に胸を膨らませじっと黙って警官が喋るのを待っていた。
しかし警官が言ったのは一言…遺書らしき物が見つかった、と。
あり得ない。
あいつが自ら死ぬなんてこと。
じゃあ何が一体…。
詳しい事はあまり聞けなかった。怖くなりそうだったから。でもね、ちゃんと聞かなきゃいけないって思ったんだ。ダチのためにもね。
で、聞いてたんだけど本当にこれが遺書?って勘違いしそうになったほど。
そんなことがあって僕はずっと心にしまっていた夢の事をついポロリと皆に話してしまった。でも誰も笑わなかったよ。逆に真っ青な顔をしてる奴もいる。でね?言われたんだ。
「ダチは何か言ってなかったか?」って。
そんな事一言も話さなかったと思う。
僕の頭の中だけでの会話だったと…。
だけど遺書なんて話も出なかったよ。
いったい誰が?
ダチに聞けたらよかったんだけど、死んでるからね。無理だよ。
「じゃあさ、夢…見てみたら?」なんて事を言う奴がいた。確かにそれなら早いかも。とは言ってもここでは寝られない。ここは道端だからね。どこかの部屋でないと…。
この村でペンションだか、宿泊施設を持っている人はあいにくと居らず、とりあえず隣村へと向かう事となった。
そこで一泊できるように一部屋部屋を借り、僕は早速布団に入って夢を見ようとした。その間皆は僕の様子を見ている。どんな感じかを知りたいようだ。
眠りについた僕は早速ダチを探した。
あちこち探すがなかなか見つからない。
「おーい!いないか?」
振り返るとそこにはダチが立っていた。
ボーッとしている。
早速僕はダチに聞いてみる事に…。
でも何も反応しなかった。まるで無反応。犯人知らないのかも、って思ったくらい。
でも鍵をかけられているなら必ずだれかが鍵をかけないといけない。それが誰かわかればいいんだけど…。
思い出せ!あの時どうだったのか?
鍵自体は新しいものだったと思う。鍵差し式だからそれさえ過ぎれば簡単に開くはず。と言う事は、犯人はその時近くにいた人間となる。
僕らとその時一緒にいた村人は除外される。
後は…後からやってきた警官くらい。他には野次馬が何人かいたくらいだからその中の犯人がいるかも…。
夢から覚めた僕は仲間にコッソリとこの事を伝えた。
すると仲間は行動を始めるのは早かった。
警官にコッソリ伝えた。
犯人と思しき人間のことを。
そして捕まったのは蔵を持っていた住人だった。たまたま偶然居合わせたダチを盗人と勘違いして閉じ込めたらしい。ある程度経ってから警察に突き出すつもりが、僕らがやってきて計算が狂ったようだ。タイミングを見て蔵から出すつもりだったらしい。たけどね?認知症も患っていたようでどうやら途中で忘れてしまっていたようだ。
そんな事って…。
なんともいいようがなかった。
ダチはたまたまこの蔵のそばに立っていて巻き込まれただけと言うことのようだ。
僕らはそいつの両親にすぐ連絡を入れた。
そしたらさ、割と早い時間にやってきたよ。
よっぽど気にしていたようだ。
そいつの亡骸を持って帰っていったよ。
僕らも警官に話し、それぞれが帰宅の途についた。
そいつがその夜僕の枕元に現れ嬉しそうな顔をして微笑みながらゆっくりと消えていった姿を見て、「ああ、ようやく成仏できるんだな。」って思い、ホッとしたんだ。