No.17「ピストルリング」
今回のお題は
(お題)
1「引き金」「腹痛」
2「人違い」「口は災いもと」
3「執念深い」「起死回生」
その悲劇の引き金は、突然催した激しい腹痛だった。
外を出歩いていたオレは、とにかくどこかで用を足せないかと思い、寂れた公園のトイレをなんとか見つけだしてそこに駆け込んだ。
「ふう……」
個室トイレの中でどうにか危機を乗り切ったオレだったが、ここでさっさと汚れた尻を拭いて、スグにこの場から立ち去らなかったことが失敗だった……
「隣の人……スマンが頼みがある……」
突如、となりの個室から誰かがオレに話しかけてきたのだ。
「え? 何ですか? 」
トイレットペーパーが切れているので新しい紙を投げ入れて欲しい……それくらいの頼みだろうとタカをくくって返事をしてしまったことを激しく後悔している。
「……申し訳ないが……しばらくコレを預かって欲しい」
隣の男は、足下の隙間から新聞紙に包まれた何かを差し出してきた。それは「くの字」の形状をしていて、手に取ったらズッシリと重かった。
「な……なんですか? コレ? 」
オレが当然のごとくそう尋ねると、隣の男はしばらくの間押し黙って突如……
「スマン! それは言えない! 」
そう言ってバタン! と大きな音を発しつつ、個室から飛び出して逃走してしまったのがドア越しの音で分かった!!
「ちょ!? ちょっと待って! 」
自分は臀部に汚物を付けたままだったので、彼を追いかけることが出来ず、そのままトイレ内で途方に暮れてしまった。今思えば、その時大恥をかいてでも急いで男を追いかければよかったのだ。
なぜなら男から手渡された新聞紙の包みの中身は……
無機質な輝きの「拳銃」だったからだ……
「嘘だろ……」
便器に座り込んだままその銃を色々と調べてみると、それは回転式のリボルバー拳銃で、シリンダーの中には5発の弾が込められていた……
この拳銃に装填できる弾数は6発……おそらく一発は「何か」で使ったのだろう。その後になってオレにコレを手渡したのだ……
「おいおいおいおい……ヤバすぎるぞこれは……」
単純に考えればさっき隣の部屋にいた男は、この拳銃を使って誰かを撃ち殺した後に、その処理としてオレを利用したと考えられる……「しばらく預かって」だとか言っていたが、多分男は戻ってこないだろう……
しかしなぜ? オレなんかに渡したところで、警察に持っていかれたら足がつく可能性だってあるのに……
いや待て……そもそも男は、この場所で誰かと待ち合わせていたのかもしれない……そこにオレが現れて、人違いで渡してしまった可能性もある……
となると……本当に待ち合わせしていた人間がこの場にやってくるかもしれない……そうなったとしたら非常にマズイ。
こんな拳銃を取り扱ってるような奴らだ……間違いなく裏社会の人間だろう……どんな理由で銃の受け渡しをしようとしていたかは分からないが、自分がタダではすまされないことをやらかしたのは明らか……
まさに口は災いの元だ……本当に今になって、隣の男を無視しなかった自分に腹が立つ。
闇の世界を生きる人間は執念深い……自分は一体これからどうなってしまうのか……?
口封じ? 拷問? それとも……
考えれば考えるほどに色濃くなる絶望の色……もういっそのこと銃を置いてこの場から逃げ去りたい!
そう思った瞬間だった……
「そうだ……! 思いついたぞ! この手しかない! 」
とある起死回生の策を思いついた彼は、元いた公園のトイレを後にしてそこから隣町まで移動。そして手頃な公園を見つけて、そこにあるトイレに駆け込み個室に入った。
そしてしばらく待ち続け、何者かが隣の個室を利用し始めた時、彼は作戦を実行する。
「隣の人……スマンが頼みがある
……」
そう、彼は自分がされた行いをそっくりそのまま、また別の人間にやり返す方法を思いついたのだ。
「ちょっ……ちょっと待って! これはもしかして!? 」
「それは言えない! それじゃあ! 」
隣の男に拳銃を押しつけた彼は、一目散にトイレから脱出! 重圧から逃れることに成功し、不気味な笑い声を発しながら走り去った。
「マジかよ……」
そして、見事に策略にハメられた男は絶望感を漂わせながら頭を抱え、こう独り言を呟いた……
「またかよ……二度目だよ……これで……」
そう……この拳銃は今の流れと同じ方法で、かれこれ50人もの手に渡っているのだ……そしてとうとう二度に渡って拳銃を譲渡される不運な男まで現れてしまったようだ。
誰がやり始めたのは不明だが……このようにして巡り巡った拳銃は、その後同じやり口で100人目に達した時、ようやく単なるモデルガンだと見抜かれてそのループに終止符が打たれたのだった。
THE END
執筆時間【1時間8分】
話の構想は二転三転、ようやくこのカタチに落ち着いた。




