No.16「スカイボール」
今回のお題は
(お題)
1「大罪」「小指」
2「必要不可欠」「綱渡り」
3「空振り」「孤軍奮闘」
「バルト……お前がしたことは大罪に等しい……なんでよりにもよってこんな大事な時に……! 」
「ご……ごめん……でも、ワザとじゃないんだ……」
「ワザとだとかそういう以前の問題なんだよ! これで俺達の苦労は水の泡だぜ」
バルトと呼ばれた青年は、十数人の屈強な男達に囲まれつつ、辛辣なな言葉を浴びせられ続けていた。
「それぐらいにしておけよお前ら。もうもうこうなっちまったモンはしょうがねえだろ」
そんなバルトを救出するかのように、一人の大柄な青年が、彼らの行為を諫めた。その青年は木製のベンチに腰を掛けていたが、左足には包帯がビッチリと巻かれている。
「おいブルー! なんたってお前がバルトを庇うんだ!? お前の足がそうなっちまったのは、試合中にバルトが踏みつけやがったからじゃねえか!! そのせいでお前……」
「いいんだ! これくらいの怪我……『スカイボール』ではよくあることさ」
『スカイボール』とは……2XXX年の温暖化によって北極の氷が全て溶け、地球が海に覆い尽くされた後に発展されて流行したスポーツである。
スカイボールは海上に張られた無数のロープ上を綱渡りで移動し、一つのボールを2チームで奪い合い、ゴールネットに投げ入れた得点数で競う球技種目だ。
この競技で基本となり、全てを語る技術が『綱渡り』であり、優れたバランス感覚と足の握力が必要不可欠なのだ。
ブルーはこの競技において天才的な成績を残すスーパープレイヤーと言える選手だった……
しかし……
「とは言ってもよぉ……紅白試合でバルトの野郎がラフプレーしたのは見逃せねえぜ! 全国大会は明後日なんだぞ! ……医者の出場許可も出てねえんだろ? 」
「ああ……しょうがないだろ」
ブルーはチームメイトであるバルトに接触した際、左足の小指を強く踏みつけられ、出場不可能なまでの怪我を追ってしまった。
たかが小指といえど、綱渡りの際にロープをしっかりと足で握りしめる為には必要不可欠な要素。高所で行うスカイボールにおいては、たったそれだけでも命取りとなるシビアな世界なのだ。だからドクターストップをかけられてしまうのだ。
「すまん……ブルー……オレのせいで……」
「いいんだ。明後日の試合、俺は出ることが出来ないが……みんな、頼むぞ! 絶対に優勝をあきらめるな! 」
そうやって全員にハッパをかけたブルーだったが……やはり選手達の士気は上がらずじまいだった。肝心要の主力を欠いたチームのムードは最悪な状態。そんな中でとうとう試合当日の日を迎えてしまっていた
。
「いけええええッ!! みんな集中しろ! ボール回せ! 」
ベンチブースにて喉が裂けんばかりに応援のゲキをとばすブルー……そしてその横で生気を失くしたような無気力のバルト。彼は実力不足で、ブルー無きチームにおいてもスタメンに選ばれることがなかった。
「くそ……後半も残り少ないってのに……13点も差が開いちまった……! もっとパスで翻弄しなきゃダメだ! 」
自らの欠場に意気消沈することなく、チームの勝利を信じ続けるブルー。彼のその姿勢は、バルトにとってはあまりにも眩しすぎた。
「ねえ……ブルー……」
「なんだバルト!? お前ももっと声出せ! みんなが頑張ってるってのによ! 」
「聞かせてよブルー」
「あぁ? 」
「ホントは……オレのコトを憎くてしょうがないんだろ? 三流のくせに紅白戦で熱くなったオレのコトをバカにしてるんだろ? 」
自嘲気味な笑顔を作りながら、バルトはブルーにそんな言葉を投げつけた。その神妙な態度に、ブルー
も何かを感じ取ったようだ。応援を止め、バルトと視線を合わせる。
「バルト……正直なコトを言わせてもらうぜ」
「……ああ。言ってくれよ」
「俺はお前のコトを憎んでなんていねえよ。むしろ喜んでる」
ブルーの意外な言葉に、バルトは一瞬だけ皮肉な笑顔が引き締まってしまったが、すぐに表情を元に戻した。
「……さすがは皆の憧れ……スーパーヒーローのブルーさんだ。こんな時でさえ自分自身の価値を案じているんだね」
「何言ってやがる……俺は本気だぜ? お前が俺の足を踏みつけた瞬間な……心の中でお前に感謝していたんだ……」
「……意味が分からない……オレのせいで怪我をしたのに……どうして……」
「……プレッシャーにさ……押しつぶされそうになってたのよ……俺……」
ブルーは弱々しくそう告白した。その姿には勇猛果敢にスカイボールに挑む選手の面影は一切残されていなかった。
「ブルー……? それはマジなのか……? 」
「ああ……俺よ……みんなが思うより小心者でさ……周りの期待に答えられるかいつもビクビクしてたよ。毎試合毎試合、孤軍奮闘している気分だった……次の瞬間にパスを受けそこなっちまうんじゃねえか? そのまた次の瞬間にシュートを空振りしちまうんじゃねえか? ってな」
ブルーは全てをバルトにさらけ出した。自らの弱い部分をこれでもかと露出した。
そんな彼の心意気に……バルトも少し心が揺らいだ。
「オレもあんたも……ずっと嘘を体に纏って生きてたんだな……」
「オレも……? 」
「そう……実はな……オレがあんたにラフプレーかましたのは偶然じゃない……ワザとさ……あんたが怪我をしてスタメンに空きが出来りゃ……オレが出られる……そう思ってたけどよ……やっぱりオレ……」
自らを絶望に追い込むバルト。その言葉を断ち切るように、ブルーは大きく、ハッキリした発音でこう言った。
「お前のタックル……なかなかだったぜ。ちゃんと磨けば、試合で大いに役立つと思うぜ。なにせ、この俺を負傷させたタックルだからな」
その脳天気なセリフに、バルトの顔も思わず綻んだ。
「言ってくれるな……」
二人はその流れで、自然と拳を突き合わせていた。お互いの和解と、拳闘を祈る神聖な儀式だった。
「とんだ大嘘つきだったのね……アンタたち……」
気持ちが通じ合った男達の間に、一人の女性がよく通る声で割り込んできた。
「ド……ドクター!? いつの間に? 」
彼女はこのチーム専属のドクターであり、ブルーに出場禁止命令を下した張本人だ。
「ドクター……今のはどうか聞かなかったコトにしてくれるか? これは男同士の秘密ってヤツで……」
「それは……私の願いを聞いてくれると言うのなら、考えてあげてもいいけど? 」
悩ましげな表情で詰め寄るドクターに、ブルーもバルトもどうしていいのか分からず、とにかく話に流されるまま、ドクターの要求にYESと答えてしまう。
「ありがとう。バルトちゃんにブルーくん。それじゃあお願いね……今すぐタイムを掛けて試合に出てちょうだい! 」
「え? 」
「ええっ? 」
世界中の雲が落っこちてきたかの衝撃的なドクターの発言に、二人は素っ頓狂な返事をしてしまった。
「君たちが大嘘つきなら、私も大嘘つきなの。ブルーくん……あなたの足の指……ちょっと捻っただけ……出場出来ないレベルの大怪我
じゃないの」
「ドクター!? それじゃあなぜ? 」
「ごめんね……私……嘘の診断書を書いたの……ウチらに勝利されちゃあ困る人間に脅されてね」
「でも、ドクター……! それじゃあ俺が試合に出たら、あなたの身が……」
「大丈夫。その為にバルトちゃんがいるんじゃないの? 」
「オ……オレすか? 」
予期せぬ指名に、バルトは漫画のようなジェスチャーで自分自身に指さした。
「私を脅したヤツの正体は分かってるの。相手チームの背番号9番。あのアホ面の子分が私の愛娘を誘拐してやがったのよ。ま、もう救出されたけどね……私の夫が警察官だってことを知らなかったようね」
ドクターは余裕の笑みで携帯端末に移る娘の写真を二人に見せた。
「分かりましたドクター……なぜ選手としては三流のオレに試合に出ろと言った理由が……」
バルトは不敵な笑みを作って両手の指をポキポキと鳴らす。ブルーはそれを頼もしく見守っていた。
「そう。バルトちゃん! 今度こそ相手を病院送りにしちゃってね! その得意のタックルで! 」
「おう! 」
「それじゃ行くか! スカイウォークスタートだ! 」
そしてその試合、ブルーの電撃復活とバルトのラフプレーによって、チームの大逆転勝利と背番号9番への報復を無事に果たしたのだった。
THE END
執筆時間【1時間40分】
時間オーバーに加えて話も纏められなかった(-_-;)
次は頑張ろう。




