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No.13「空樹のてっぺん」

今回のお題は



(お題)

1「空を飛ぶ」「鬼ごっこ」

2「近道」「レース・競争」

3「雨天中止」「瞬きの間」



「さすがはマチだ。オレのスピードについてこれるとはね」



「ソラ、あんたがトップでいられる時代も終わりだよ! こっからどんどん突き放してやるからね! 」



 風を切り裂くようなスピードの中、ソラとマチはビーコンを使って軽口をたたき合う。



 彼らは今、大空を飛んでいる。



 2XXX年、この時代の人類は完全に空を支配していた。誰でも簡単に、散歩感覚で天空へ飛び立てる飛行装置「エアライドヴィークル」の発明により、地球の制空権は人間達が支配した。



 科学技術の発展により、生活が大幅に変化され、そして娯楽もさらに多様性を帯びた。



 それが「エアライドラリー」と呼ばれるスポーツである。



 100人以上の参加者が何日も掛けて3300kmに及ぶ距離をエアライドヴィークルを使って飛行してその順位を競い合うという単純明快な耐久レースだ。



 そのエアライドラリーにて、3年連続で優勝杯を手にする、という偉業を成し遂げた男こそソラである。


 そして今年も例外なく開催されたエアライドラリーも現在レース終盤にさしかかり、先頭を突っ走るのはソラ。しかしそのわずか後ろに執念深く鬼ごっこのように食らいついている一人の新人選手、マチの存在が例年とは異なる点。



 エアライドラリーはその一部始終を追尾ドローンにより撮影され、その様子はネットワークを介して世界中に配信されている。



 このままソラが逃げ切るか? それともマチが新時代を築くのか……!? 多くのファンが見守る中、二人の選手はとある賭けに出た。



「マチ!? どこに行くつもりだ!? 」



 突然進路変更をしてコースから外れるマチの行為を、ソラは見逃せなかった。



「こっちの方が近道なの! ショートカットってヤツ! 」



「やめろ! そっちには『ブレークポイント』が無い! 危険だ! 」


「だから賭けなの! 」



 ブレークポイントとは、ラリーのコース中に点々と配置された休憩ポイントである。



 それは小さな塔のような形で、その上に不時着してヴィークルのエネルギーチャージ及び、給水や補給食の確保が可能になっている。



 たった今、マチがエリアをそれて近道として使った方向は、確かに直線で突っ切ることが出来ればゴールまでかなりの時間短縮になるが、ブレークポイントが無い為に、途中でヴィークルのエネルギー切れで墜落する危険性があるのだ。



 マチはその危険をおかしてまで、このレースに勝ちたかった。だから彼女を危険行為に走らせた。



「バカ野郎! 」



 ソラは経験上、その危険エリアを抜けるにはどんなに最新型のヴィークルを使っても途中でエネルギー切れになることが分かっていた。彼はマチを案じて、彼女を追うように危険エリア内へと身を投じた。



「マチ! 正規ルートへ戻れ! 」


「ごめんだよ! 私はどうしてもこのレースに勝ちたいんだから! 」


 ショートカットを譲らないマチに対し、ソラはざわめく胸中を隠しきれなかった。



 このままでは一大事になる……



 マチは若かった……だから理解していなかったのだ。



 レースでそのエリアが使われないというコトは、そのエリアがレースにふさわしくないというコトを。



「うわッ!? 」



 ソラの杞憂は見事に的中してしまった。



 さきほどまで晴天だった天候が急激に暗闇を帯び、薄黒い雲群が豪雨と雷鳴による洗礼を二人に容赦なく浴びせかかった。



「マチィィィィッ!! 」



 豪雨によって空中姿勢のバランスを崩してしまったマチは、そのまま吸い込まれるように真下へと落下していく。



「キャァアアアアッ! 」



 ソラはヴィークルを最大出力にして、悲鳴を上げるマチの方へと突っ込んでいく。



「掴まれ! 」



 間一髪、マチは墜落する一歩手前のところでソラに抱き抱えられながら救出された。



「大丈夫か!? 」



「うん……ごめん……ソラ……」



「そういうのは後だ……! 今はとにかく、不時着できる場所を……」



 マチの救出に成功したものの、雨は依然として二人に降りかかっている。このままでは再びバランスを崩してしまうことは目に見えている。とにかく今は、どこかに着地して避難し、雨宿りをしなくてはならない。



「ソラ! 見て! あそこ! 」



 曇天の薄暗い中、マチはとある方向を指さし、ソラの視線を誘導する。



「おお……ちょうどいい! あそこに不時着しよう」



 彼女が指さした先には、直径20m以上はある、多角形で作られた円上のスペースがあった。



 彼らはその場所に着地し、お互いに緊急用の防護シートに被さって雨をしのぐことにした。



「ソラ……ごめん……私のせいでこんな……」



「いいよ……気にするな。ここなら追尾ドローンもいない。こうしてお前と二人で荒れる海を眺めるのもオツってもんだ」



「はは……ポジティブだね……相変わらず」



 彼らが眺める世界は360度、全てが水に覆われている。



 そう……人類は、制空権を手にした代わりに、制地権を手放さなければならなかった。



 彼らの生活する時代より100年前……温暖化による影響で北極の氷が融解して海面が上昇。大地はほぼ全て海に沈んでしまっていたのだ。



「とにかくオレ達の勝負は一旦雨天中止だ。今はタイムを競い合うライバル同士じゃない……ただの幼なじみだ……気楽にしてようぜ」



「気楽……ねえ……」



 一枚の防護シートの中で身を寄せ合う二人は次第にその体を強く密着させていた。



「ソラ……約束はちゃんと守ってよね」



「……あ……ああ、そりゃあ守るよ……」



「私がソラより早くゴールしたら………………してくれる。って話」



「え……そりゃあ、まあ……って!? 」



 ほんの瞬きをする間に、ソラの目の前には体温が伝わるほどに密着するマチの顔があった。



 あまりにも突然のことだったので、何をされたかがスグに理解できなかったソラは、しばし呆然としてしまう。



「……雨……止んだみたいだね……それじゃお先に! 」



 心ここにあらずといった状況のソラを後目に、マチはヴィークルを始動させて晴天の水色グラデーションの中へと消えていった。



「え……? もしかして……今……」



 そっと唇に手を当てて、ようやく自分の身に何が起きたのかを理解出来たソラは、自身も赤面しながら大空へと戻っていく。



「ず……ズルいぞマチ!! そんなの卑怯だ! 」



 追尾ドローンも、他の選手からの目からも知られない、二人だけのやりとりを見ていたのは……かつて日本と呼ばれていた国で大規模な電波送信の役目を担っていた巨大な塔「スカイツリー」だけだった。





THE END

 執筆時間【1時間18分】


 また時間オーバー(^^;)

 創作向けのお題だったので、余計に話を練り込みたくなって遅くなったのかもしれん。

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