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No.11「吉岡くんの趣味がバレてしまった日」

今回のお題は



(お題)

1「不実」「年上」

2「ボタン」「罰」

3「リメイク」「足りない」




「ジェイソンさん……そろそろ何か行動に移してはどうでしょうか? 」



 絶望の中、自我を保つのが精一杯な俺に、彼女……「レイ」はお芝居の台本を読み上げるような口調でそう言った。



「レイ……キミは何でそんなに冷静なんだ……この惨状を見て……どうしてソファに座ってテレビを見ているような、そんな平常心を保っていられるんだ……!? 」



「それは当然です……私は創造主様の使いですから……」



 イカれた電波女はさも当然のように不実にそう吐き捨て……地面にしゃがみこんだ俺の隣にそっと並び立った。


「ジェイソンさん……あなたは私よりも年上ですが、言わせていただきますよ? この結果は全てあなた自身が巻き起こした結果なのです……いい加減に受け入れたらどうなんですか? 」



「……受け入れられるかよ……受け入れてたまるかよ……こんなことって……こんなコトってあるのかよぉぉぉぉッ!! 」



 ジェイソンは慟哭した。そんな彼を、レイはひたすら冷ややかに見下ろしていた。



 彼ら二人が立ち尽くしたその場所は……無惨に朽ち果て、人間の存在を真っ向から否定する出で立ちの廃墟……



 崩れかけたビル……真っ黒に染まった岩のような地面……まさしく、世界の終わり。



 この終末の様相を作り上げた原因は……他ならぬジェイソンだった。




~二十日前~



 借金苦に追い込まれたジェイソンは、ある日怪しげな男に「人生を大逆転させる賭けに乗らないか? 」と持ちかけられる。



 怪しいとは思いつつも、ジェイソンはその賭けの報酬である1000万ドルの字面に目が眩み、承諾書にサインを記してしまった。



 そして数日後、彼は目隠しをされたまま、とある部屋へと招かれる。



 目隠しを外した彼の目の前には、コンビニエンスストアほどの広さに間取りを作られた、真っ白な壁の部屋が入り込んできた。



 その部屋には、一ヶ月分の食料に加え、シャワーやトイレの完備、寝室、酸素タンク等……生きる為に不可欠な設備が備わっており、さながら核シェルターを思わせた。



「キミにはここで一ヶ月過ごしてもらう……生きてここを出ることが出来たら1000万ドルの報酬を渡そう」



 謎の男はジェイソンにそう言った。



「そ……それだけか? マジで、ここで生活するだけなのか? 」



 あまりにも簡単すぎるミッションに、かえって不信感を抱くジェイソンだったが、そんな彼の猜疑心を埋め合わせるように、謎の男はパンパンと手のひらを叩いて合図を鳴らす。



「……はじめまして……レイと申します」



 その合図と共に現れたのは、まるで絵画の世界から飛び出したかのように整った顔立ちと、妖艶な色気を纏った美女だった。そう……彼女こそがレイだ。



「は……はじめまして……」



 突然来訪した美女にたじろぐジェイソン。そんな彼を見て含み笑いをしつつ、謎の男は説明を続ける。



「ジェイソン君。キミはこのレイと共に一ヶ月間この閉鎖空間で過ごしてもらう……それだけだ……ただし一つ……絶対にしてはならないコトがあるのでそれを説明しよう」



「……それは一体……」



「このレイに……指一本でも触れたら……即刻ゲームオーバーだ。その時はこの子自身が起動ボタンとなり、賭けに失敗して1000万ドルを逃すだけでなく……重大な罰がキミを待ち受ける」



「……重大な罰……? 」



 ジェイソンは唾を飲み込み、そのペナルティの概要を聞きだそうとするも、謎の男はそれだけは彼に一切教えなかった。



 不安が残るものの、借金取りに追われる毎日のジェイソンに選択の余地はなかった。彼はこの賭けに乗り。レイと共に一ヶ月を過ごすチャレンジを開始したのだ。



「よろしく……レイ……さん」

「よろしくおねがいいたします。ジェイソンさん」



 こうしてお互いに握手を交わすこともできないまま、チャレンジがスタート。



 たかだか一ヶ月さ……何てコトない……レイがどれだけそそる体してるからって、1000万ドルを逃してまで手を出すことは無いだろうよ……この賭け、楽勝だな! 



 ジェイソンはレイとの同居に余裕の心持ちで挑んだが……それがとんでもない苦行だったことを、その時は微塵にも思っていなかった。



 まず、この部屋のシャワー室には壁の区切りが無く、薄いカーテンで締め切られただけだった。



 彼女が体を清めれば、その艶めかしいシルエットが否応無くジェイソンの視界に入ってくる。



 それに加えて、この部屋に用意されていた衣服……特にレイの着衣はどれも胸元がはだけていたり体のラインがくっきりと強調されているものばかりで、これまたジェイソンの劣情を誘っていた。



 かといって目を閉じて視界を塞ごうとも、その時にはレイは淫らなイメージをかき立てる声を発し続ける始末……



 そして20日が過ぎた頃……ジェイソンはとうとう理性を失ってしまったのだ……



「ジェイソンさん……私に触れましたね……」



 彼に押し倒されたレイは、マネキンのように冷たい視線を送りつつそう呟くと、次の瞬間……



「う……うわああああっ!!?? 」



 この部屋事態がひっくり返ったかと思うほどの大きな揺れ……そして世界中の火山が一斉に噴火したかと思うほどのけたたましい轟音が鳴り響いた。



 10分……いや……何時間もそれが続いたのかもしれない……



 ようやく静寂が収まった頃、部屋の天井から突然一本の梯子がゆっくりと降りてくる。レイは「どうぞ」とジェイソンにそれを昇るように促した。



「う……嘘……だろ……」



 梯子を昇り、地上へと顔を出したジェイソンに待ち受けていたのは……崩れ落ちた街の光景……



 彼がレイに手を出した代償は、この世界の崩壊だったのだ。





「ジェイソンさん……あなたは日頃からよく言っていたらしいじゃないですか? こんな世界滅んでしまえ! 俺以外の人間は全て死ね! って。良かったじゃないですか……願いが叶って」



「レイ……おまえ達の目的はなんだ……どうしてこんなコトを俺にさせた……」



「ジェイソンさん……私達はこの世界を作り上げた創造主の使いです……あなたは選ばれたのですよ? この世界をリメイクする為の逸材として……莫大な金よりも子孫繁栄を選んだ創世人として……」



 レイの言葉も、もはや夕食中の環境音として流したテレビドラマの台詞のようなものだった……もはやどうやってもジェイソンには届かない。



「……ジェイソンさん? 」



「……しばらく……ほっといてくれるか……」



「……そうですか……それじゃ、また私を押し倒したくなったら、いつでもお好きなように」



「…………どこまでも……ふざけやがって……」



 掠れた声で必死に言葉を発するジェイソン。うつろな目で廃墟を見つめる彼だったが……その姿を観察していたのはレイだけではなかった。








「全く会長の趣味にはついていけませんよ……」



「フフ……吉岡君……キミもスグにわかるようになる……アダムとイブの状況に放り込まれた人間が一体どういう反応を見せるかという面白さが……そしてそれを肴に味わうスコッチの格別さが……」



 レイの頭部には、人目では決して視認することが出来ない超小型の高性能カメラが取り付けられていた……そこから送られてくる映像を美酒を飲みつつ観察する男……それこそがこの「美女に触れたら世界が崩壊しました」企画を立ち上げた張本人だ。



 彼は裏社会を牛耳る大物で、変わった人間観察をすることを趣味としている変人として有名だった。



 ありとあらゆる娯楽にあきた彼が考案したこの企画は、まず日本の軍艦島と呼ばれる島全体が廃墟となった島を改造して、あたかも世界が終わったかのような超大がかりなセットを作り上げることから始まった。



 そしてその地下に、人工地震と大型スピーカーとウーハーによる「終末の日再現装置」を取り付けた核シェルターを作り上げたのだ。



 あとはその中に債務者と美女を閉じこめ、その中で必死に劣情を押さえ込む男たちの姿を隠しカメラで観察して楽しむのだ。



「それにしても会長……あのレイって子……どこから見つけだしたんですか……あんなにエ……艶やかな女性は見たことがありませんよ……」



「フフ……お前もまだまだ修行が足らん……レイが『女』に見える内はな……」



「……会長……もしかして……その言葉の意味は……」



「その通りだ吉岡……レイ……あの子の染色体は一本足りない……要するに彼女……いや、彼は『男』なのだ」



 その衝撃的告白に、吉岡は自分の目を疑った。どうみても女にしか見えないレイが……自分と同じ性別だったことに驚きを隠せなかった。



「……なるほど……だからジェイソンはあそこまで絶望感を漂わせて……」



「はは……世界が終わっても美女と一緒なら、まだまだ希望はもてるがね……そうでないと知った時は、まぁああなるだろう……フフ…………まぁ、仮にワシがジェイソンと同じ立場だったら……全く絶望感など抱かずにレイを愛すだろうがね……ハハハッ!! 」



 その発言に吉岡は満面の笑みを浮かべて握り拳を作り、会長の言葉を繋ぐように熱弁する。



「会長……気が合いますね! それは私も同じですよ! 全くジェイソンの奴はどうかしてますね! あんなにかわいい男の娘を前にして……」



「……スマン吉岡……冗談で言ったんじゃ……ワシ……」



「……………………」



 吉岡はそのまま黙りつつ、会長の部屋から退室。軍艦島に二人を迎えに行かせるヘリの手配を淡々と済ませた。





THE END

 執筆時間【1時間30分】


 今回、アイディアはスグまとまったのに文字量を抑えることが出来なかった……

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