Очи чёрные 4
まず、強い南部訛りがあった。ほつれた修道服が、彼女の全てを形容していた。ただ、それだけではなかった。フランス語もロシア語も、イタリア語もスペイン語も、トルコ語も中国語も。そこは、言語の坩堝だった。多数の言語があるということは、すなわち多数の文化と思想が存在していた。そんな中で、修道服の彼女は見事に僕達をまとめ上げた。彼女自身の思想は、まさしくその胸の十字架だ。彼女は、みんなの模範だった。
「兄さん」
一方で僕をそう呼ぶ声は、北部系のドイツ語だった。その少女は、大抵用もなく私を呼んだ。その度に笑っていた。町が、国が、世界が脅威にさらされていた中で、彼女はそうした。むしろ、この状況下だからかもしれない。ただ一つ言えるのは、そこは唯一の、残された楽園だったこと。そして、その時間が、もう二度とやってはこないこと。
別れは、唐突なものだった。とある朝に上等な馬車がやってきて、妹を連れて行ってしまったのだ。みんな味方をしてくれたが、子供の力だけではどうにもならなかった。そして、いくら言及したところで、修道服の彼女の言うことは変わらなかった。しょうがなかったのだと。
それから私は、外の世界を意識し始めた。学んだことの全ては、妹を取り返すためだった。
だから先生がやってきたときには、この機会を逃すわけにはいかないと思った。あのローゼンクロイツなら可能だと信じていた。
そうして私は、先生について行き、薔薇十字特別自治区の医学生としての戸籍を得た。始めは魔術士でもなんでもなかった。ただ一つ言えるのは、私がどんな才能を持っていようとも、何を志していたとしても、この場所に立っていただろうということだ。